あなたは、スマートフォンを拾ったことはありますか?
それが見知らぬ他人のものだとしたら、どうしますか?
この記事では、そんな状況について法律の観点から考えてみたいと思います。
例えば、ある日、阿部さんが伊藤さんのスマートフォンを拾い、それを江藤さんにあげたとします。
そのスマートフォンには(話の便宜上)パスコードも、Face ID、Touch ID などのセキュリティ機能が設定されていなかったものとします。
そしてメモ帳にはいろいろなIDやパスワードが書かれていたとします。
そこで、江藤さんがそのスマートフォンを使って買い物をしたらどうなるでしょうか?
結論からいうと、スマートフォンを拾って警察署や交番に届けなかった阿部さんには、刑法の遺失物等横領罪が成立します。
また、そのスマートフォンをもらった江藤さんはその物を利用することで刑法上の詐欺罪に該当します。
また、江藤さんは不正アクセス禁止法にも違反することになります。
(※あくまで法律の一般論であることをご了承下さい。)
以下詳細を見ていきましょう。
【もくじ】
1)遺失物法とは?
2)不正アクセス禁止法と詐欺罪
3)個人情報の保護
1)遺失物法とは?
遺失物法とは、私たちが日常生活でときどき「物を拾った!」という状況について定めた法律です。
この法律は、遺失物を拾った人がどのようにすればよいのか、そしてその物の所有権がどのようになるかを規定しています。
遺失物を拾った場合の手続きは次の通りです。
まず、その物の所有者を探すことが最初の段階です。
もし所有者が見つからない場合は、最寄りの警察署や交番にその物を届け出ることが求められます。
遺失物法第4条
拾得者は、速やかに、拾得をした物件を遺失者に返還し、又は警察署長に提出しなければならない。ただし、法令の規定によりその所持が禁止されている物に該当する物件及び犯罪の犯人が占有していたと認められる物件は、速やかに、これを警察署長に提出しなければならない。
警察は、その物の所有者を探すための手続きを進めます。
これに違反した場合、刑法の規定により、遺失物等横領罪に問われる可能性があります。
刑法第254条(遺失物等横領)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処す。
もし3ヶ月経っても所有者が見つからない場合、遺失物を拾った人がその物の所有権を得ることができます。
民法第240条(遺失物の拾得)
遺失物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後3箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
つまり、物を拾ったら、まずは警察に(場合によっては遺失主に)届けるのが正しいということですね。
このように、遺失物法は私たちの日常生活上、遺失物を拾ったときどうすべきかを定めています。
しかし、これには一定の条件があります。
例えば、遺失物を拾った人がその物を警察署や交番に届けようとしないで 自分のものにしようとしたり、他人に渡したりすることは法律に違反します。
この場合、落とし物を拾った人は、所有権を取得することはできません。
それより何より、スマートフォンの所有権の移転は、遺失物とは異なり特殊な状況が伴います。
スマートフォンには個人情報やクレジットカード情報など、デジタルな要素が含まれていますよね。
クレジットカード情報などのアカウントは、スマートフォンなどの物理的なデバイス(端末)とは別のものです。
だから、スマートフォンを拾った人がそのデバイスを持っていても、その中のデジタルな情報(アカウントやデータ)の所有権は移りません。
遺失物法第35条第4号(所有権を取得することができない物件)
遺失者又はその関係者と認められる個人の住所又は連絡先が記録された文書、図画又は電磁的記録
さらに、所有権を移転する際には通信キャリアやサービスプロバイダーとの契約関係も重要です。
例えば、auやNTTドコモ、ソフトバンク等、各キャリアでは、スマートフォンの名義変更に特定の手続きが必要です。
そのため、適切な手続きをふまずにスマートフォンを無断で使用したり譲渡したりすることは法律的に問題となります。
遺失物を拾った場合は、警察署や交番に届け出るこようにして下さい。
2)不正アクセス禁止法と詐欺罪
スマートフォンを無断で使用することは、法律で禁じられています。
これは「不正アクセス禁止法」により規定されているからです。
この法律は、他人のスマートフォンやコンピュータに無断でアクセスする行為を禁止しています。
例えば、ある日、あなたがカフェで見知らぬ人のスマートフォンを見つけたとします。
そのスマートフォンを使ってSNSをチェックしたり、ゲームをしたりすることは法律に違反する行為となります。
他人のスマートフォンを無断で使うことは、まるで他人の家に勝手に入るようなものだと思いませんか?
さらに、他人のスマートフォン内の情報を使って無断で買い物をする行為は、詐欺罪に問われる可能性があります。
詐欺罪は刑法第246条に規定されており、他人をだまして金品を得る行為を禁止しています。
例えば、他人のスマートフォンからクレジットカード情報を見つけ、それを使ってオンラインショッピングをした場合、これは詐欺罪に当たります。
刑法第246条(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。
こちらはあたかも、他人の財布からお金を盗むのと同じような行為ですよね。
法律は私たちの生活を守るために存在します。
だからこそ、私たちは法律を守り、正しい行動をとることが大切といえます。
3)個人情報の保護
個人情報の保護は、現代社会において非常に重要な課題です。
個人情報とは、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど、個々を特定することができる情報のことをいいます。
これらの情報が不適切に取り扱われると、個人のプライバシーが侵害され、様々な問題を引き起こす可能性があります。
例えば、あなたがインターネットでショッピングをするとき、クレジットカード情報や住所などの個人情報を入力しますよね。
これらの情報が第三者に漏洩した場合、不正利用されるリスクがあります。
個人情報の保護は、私たち自身の安全と直結しているんですね。
また、プライバシーの侵害は、個人情報の不適切な取り扱いによって生じます。
プライバシーの侵害防ぐためには、個人情報保護法を理解し、適切に行動することが重要です。
例えば、他人のスマートフォンを無断で使用したり、他人のパスワードを使って買い物をしたりする行為は、個人情報の保護や不正アクセス禁止法(第3条、4条、6条)に反する行為となります。
他人のプライバシーを尊重し、個人情報を適切に取り扱うことは、社会人としての基本的なルールでありマナーですよね。
個人情報の保護について理解し、適切な対応をとることで、私たちは安全な社会を作り上げることができます。
まとめ
この記事を通じて、あなたは遺失物法、不正アクセス禁止法、詐欺罪、そして個人情報保護法について理解できたのではないでしょうか?
これらの法律は、私たちが日常生活で遭遇する可能性のあるさまざまな状況を規定しています。
法律を知ることは、自分自身を守るだけでなく、他人の権利を尊重するためにも重要なんです。
例えば、スマートフォンを拾ったとき、それを無断で使用したり、他人に渡したりすることは法律に違反します。
また、他人のスマートフォンから音楽をダウンロードしたり、パスワードを使って買い物をしたりする行為も法律に違反する可能性があります。
私たち一人一人が法律を守ることで、社会全体が安全になるんですね。
この記事が、法律を理解し、正しい行動をとるための一助となることを願います。