「行旅死亡人」っていう言葉、知っていますか?
漢字だけを見ると、旅行に行って亡くなった人のように思えますよね。
でも、実際の意味は少し違います。
初めてこの言葉を聞いたとき、私は「家を持たない人が色々な場所を転々として、最後に行き倒れてしまったのかな?」と思いました。
でも、実際には、「行旅死亡人」とは、❶旅行中に亡くなり、遺体を引き取る人がいない人、または、❷名前や住所などがわからず、遺体を引き取る人がいない人を指す法律用語なんです。
今回は、この「行旅死亡人」についてお話しします。
【もくじ】
1)行旅死亡人とは
2)なぜ行旅死亡人になるのか
3)行旅死亡人の対応は自治体が行います
4)火葬や埋葬の費用はどうなるのか
1)行旅死亡人とは
「行旅死亡人」とは、身元がわからず、遺体を引き取る人もいない人のことを指します。
死因は何でも、自殺だったり他殺だったり病死だったり衰弱死だったりと様々です。
孤独死で身元が判明しない場合も含まれるんです。
行旅死亡人の数は、国の広報誌である官報によると、年間600人〜700人とされています。
この数は多いと思いますか?それとも少ないと思いますか?
行旅死亡人の取り扱いは、「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」という法律に従います。
この法律によれば、死亡地の自治体が火葬と埋葬を行うことになっています。
また、「行旅病人」という人もいて、歩くことすら困難な旅行者で、病院に行くお金もなく、助けてくれる人もいない人のことを指します。
これらの人々の救護は、所在地の市町村が行う義務があります。
2)なぜ行旅死亡人になるのか
この法は、明治32年(1899年)に制定された日本の古い法律で、旅行中に病気になったり死亡したりした場合の取り扱いに関するものです。
この法律は、行旅人が病気や死亡をした場合は所在地の市町村が救護するべきことなどを定めています。
その時代は、共同体のつながりが強く、身元不明者や引き取り手がいない人々の多くは旅行者であったと考えられます。
また、何らかの事情で郷里を追われ、地方を転々としていた人や、困窮の中で職を探しながら各地を回っていた人も含まれていたことでしょう。
現代社会は、「無縁社会」とも言われ、お隣さんが誰かもわからないことがありますよね。
そのため、各地を転々とせずとも、住居で見つけられた孤独死であって、身元が判明されない場合は行旅死亡人として扱われることもあるそうです。
これは、行旅死亡人とは❶「行旅中に死亡し引き取り手が存在しない死者」または❷「本人の氏名または本籍地・住所などが判明しない人で、かつ遺体の引き取り手が存在しない場合」を指すためです。
このように、この法律は、社会の変化とともにその適用範囲を広げてきたと思います。
この法律は、社会の安全網としての役割を果たし、身元不明者や引き取り手がいない人々の救護を通じて、社会全体の福祉を支えてきたのです。
3)対応は自治体が
行旅死亡人に対する対応は、その人が発見された自治体が行います。
行旅死亡人が見つかると、警察と行政がその親族を探します。
身元不明の遺体となった場合、速やかに火葬され、遺骨は自治体が保管します。
遺骨の保管期間は、それぞれの自治体の施行規則によります。
例えば、札幌市では遺骨の受理後原則2年間とされています。
しかし、保管期間は自治体により異なり、1年、5年、あるいは20年と記載されている場合もあります。
そして、自治体は次の事項を官報で公告します。
①行旅死亡人のおよその年齢
②外見の特徴
③所持品
④発見された日時・場所。
この公告は遺族が行旅死亡人を探すための手がかりとなります。
現在では、ネット版の官報もありましね。
4)火葬埋葬費用
行旅死亡人の火葬や埋葬に必要となる費用は、原則として、死亡人が持っていた金品から支払われます。
もし死亡人が何も持っていない場合、その火葬や埋葬の費用は一旦、自治体が立て替えます。
その後、引き取り手が見つかった場合には、その引き取り手に費用を請求します。
しかし、引き取り手が支払いを拒否した場合や、引き取り手が見つからなかった場合には、都道府県がその費用を負担することになります。
このような規定は、この法律に基づいています。
まとめと終わりに
以上が行旅死亡人に対する取り扱いでした。
無縁社会といわれる現代、絶対に行旅死亡人にならないとは言い切れません。
もし家族や親族に限らず、気心知れた、遠慮のいらない間柄、そんな人がいるならば、これからも大切に付き合っていくことが、大切なことだと思います。
孤独死などして、行旅死亡人にならないための大きな助けになるでしょう。