今回は、2023年7月に新たに設けられた不同意性交罪(強姦罪→強制性交等罪→不同意性交罪)についてわかりやすく解説します。
不同意性交罪とは、相手の同意がないのに性交等をすることを禁止する罪です。
では、どんな場合に同意がないと判断されるのでしょうか?
具体的には、8つの行為や事由が法律に書かれています。
それ以外にも、相手をだまして性交等をする場合も、同意がないとみなされます。
この記事では、以下の内容について解説します。
【もくじ】
1)不同意性交罪の概要
2)8つの行為や事由の例
3)だまして性交等をする場合の例
4)不同意性交罪の刑罰
1)不同意性交罪の概要
この罪は、相手の同意がないのに性交等をすることを禁止する罪です。(刑法第177条)
刑法|条文|法令リードを参照下さい。
この改正は、性犯罪の被害者の声に応えるために行われたと言えます。
以前の法律でも、被害者が抵抗できない状態にある場合には、暴行や脅迫がなくても罪に問われることがありました。
しかし、改正により、同意がないと感じる場合の範囲が拡大されました。
例えば、酔っているときや眠っているとき、恐怖や驚きで抵抗できないとき、虐待されているときなどです。
これらの場合にも、性交等をすることは罪になるというのが、改正の趣旨と言えます。
2)8つの行為や事由の例
では、どんな場合に同意がないと判断されるのでしょうか?
具体的には、8つの行為や事由が法律に書かれています。
それぞれについて、例を挙げてみましょう。
1. 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
□ 暴行とは、相手を殴る、蹴る、引っ張る、つねる、噛むなどがこれに当たります。
例えば、過去に暴行や脅迫を受けたことがある相手と、その後に性交等をする場合も、不同意性交罪に該当します。
□ 脅迫とは、相手に対して危害を加えると言って脅すことです。
例えば、殺す、傷つける、暴露する、解雇するなどです。
□ 暴行や脅迫行為は、以前の法律でも罪とされていました。
2. 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
□ 心身の障害とは、心や体に異常があることです。
例えば、精神疾患、知的障害、認知症、発達障害、身体障害などです。
□ 不同意性交罪は、相手に心身の障害があることを知っていて、その状態を利用して同意を得ずに性交等を行う場合に成立します。
例えば、相手に薬を飲ませて錯乱させることや、相手が認知症であることを知って性交等をする場合も犯罪成立です。
3. アルコール若しくは薬物を摂取させること又はその状態にあること。
□ アルコール若しくは薬物とは、酒や薬など、意識や判断力に影響を与えるものです。
例えば、ビール、ワイン、日本酒、ウイスキー、睡眠薬、覚せい剤、大麻などです。
□ この行為や事由は、相手がアルコールや薬物の影響を受けていることを知っていて、その状態を利用して同意を得ずに性交等を行う場合に該当します。
例えば、相手に酒を飲ませて酔わせることや、相手が薬物を使用していることを知って性交等をする場合などです。
4. 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
□ 睡眠その他の意識が明瞭でない状態とは、眠っているときや、ぼんやりしているときなど、自分の意思や状況をはっきりと認識できない状態をいいます。
例えば、相手を眠らせることや、相手が眠っていることを知って性交等をする場合などです。
□ 不同意性交罪は、相手が睡眠その他の意識が明瞭でない状態にあることを知っていて、その状態を利用して同意を得ずに性交等を行う場合に成立します。
5. 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
□ つまり、相手が同意を示すことができない状態にあることを知っていて、その状態を利用して同意を得ずに性交等を行う場合のことを指します。
例えば、相手が「やめて」と言ったり、抵抗したりできない状況をいいます。
また、相手がそうすることを邪魔する行為も含まれます。
6. 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
□ 普通では考えられない出来事が原因で、相手が同意を示すことができない状態にあることを知っていて、その状態を利用して同意を得ずに性交等を行う場合のことを指します。
例えば、突然、ナイフや銃を見せる、急に他の人が現れる、監視カメラがある所で性行為等をしたり、意に反し録音や録画をするなどです。
7. 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
□ 虐待に起因する心理的反応とは、過去に虐待を受けたことによって、心に傷を負ったり、トラウマになったりすることです。
例えば、恐怖、不安、抑うつ、自己否定、無力感、依存、解離などです。
□ 不同意性交罪は、相手が虐待に起因する心理的反応を示していることを知っていて、その状態を利用して同意を得ずに性交等を行う場合に成立します。
例えば、相手に虐待をした人と同じ言葉や仕草をすることや、相手が虐待を受けたことがあることを知って性交等をする場合などです。
8. 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
□ 経済的又は社会的関係上の地位とは、お金や仕事や家族や友人など、人と人との関係において、優位や劣位にあることです。
□ 不同意性交罪は、相手が経済的又は社会的関係上の地位を利用して同意を得ずに性交等を行う場合に成立します。
例えば、上司と部下、教師と生徒、親と子、夫と妻などです。
□ 影響力とは、相手に対して何かをさせたり、させなかったりする力です。
例えば、昇進させる、成績を上げる、お金を渡す、暴力をふるうなどです。
□ 不利益とは、相手にとって損になることで、例えば、降格させる、落第させる、お金を取り上げる、暴露するなどです。
□ 不同意性交罪は、相手に「断ればクビにする」と言って脅すことや、相手が「断ればクビになる」と思っていることを知って性交等をする場合などに成立します。
前編のまとめ
以上が、新たに設けられた不同意性交罪です。
不同意性交罪は、手段が暴行や脅迫行為に限らず、幅広い状況に該当します。
しかし、この新設は被害者の声に応えたものであり、評価できる改正といえます。
後半では、だまして性交等をする場合の例や罰則について見ていきたいと思います。
ポチッと応援お願いします!👇