「市民逮捕」、この言葉を聞いたことがありますか?
最近、一部のYouTuberが自ら「犯罪撲滅活動家」を名乗り、市民逮捕(私人による逮捕)を行う動画を投稿しています。
しかし、その行為が法律的に問題となり、逆に逮捕されるケースも出てきています。
市民逮捕は一見、正義を守る行為のように思えますが、実はその裏には大きな危険性が潜んでいます。
弁護士からは、市民逮捕の適法性やその危険性についての警告が出されています。
この記事では、市民逮捕の問題点とその背後にある法律的な課題について詳しく解説します。
【もくじ】
1)市民逮捕とは何か?
2)YouTuberによる市民逮捕の現状
3)法律的な視点から見た市民逮捕の問題
4)弁護士からの警告
5)市民逮捕系YouTuberへの対策
1)市民逮捕とはなにか?
市民逮捕とは、一般市民が犯罪を発見した際に、警察が到着するまでの間に犯人を一時的に拘束することを意味します。
例えば、ある日、あなたが街を歩いていて、突然、前方でスマートフォンの窃盗事件を目撃したとしましょう。
その場で犯人を追い詰め、市民逮捕を試みることは可能ですか?
答えは「YES」ですが、その行為が法律的に許されるのは、非常に限られた条件下だけなんです。
市民逮捕が適法となるための要件は、犯罪が❶現行犯であること、そして逮捕者がその犯罪を❷直接目撃したことです。
刑事訴訟法第213条(現行犯逮捕)
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
しかし、これらの要件が満たされない場合、市民逮捕を試みた人自身が逮捕される可能性があるんです。
それではまったく本末転倒ですよね。
これは、市民逮捕が適切に行われなかった場合、逮捕者が傷害罪や監禁罪に問われるリスクがあるからです。
刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第220条(監禁罪)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
さらに、❸市民逮捕後は直ちに警察に通報し、❹犯人の身柄を引き渡す義務があります。
刑事訴訟法第214条(私人による現行犯逮捕)
検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。
これを怠ると、違法な監禁となり、法律に触れる可能性があるんですね。
このように、市民逮捕は一見、犯罪を防ぐための有効な手段のように思えますが、その裏には多くの法律的な問題が潜んでいます。
だからこそ、私たちは市民逮捕の正しい知識を持つことが重要なんです。
このことは、自分自身を守るため、そして他人を誤って傷つけることを避けるためと言えるでしょう。
2)YouTuberによる市民逮捕の現状
YouTubeには様々なジャンルの動画が投稿されていますが、その中でも「市民逮捕」を行うYouTuberも少なくありませんよね。
彼らは自らを「犯罪撲滅活動家」と名乗り、市民逮捕を行う様子を動画に収めて公開しています。
しかし、これらの動画が問題視される理由は何でしょうか。
それは、市民逮捕が適法となるための要件が厳格に定められているにも関わらず、それが満たされていない場合が多いからなんです。
例えば、あるYouTuberがチケット転売を行っている一般人を市民逮捕したという動画が話題になりました。
(チケットの無断転売は禁止されていますので。)
しかし、この行為は市民逮捕の要件を満たしていない可能性があり、逆にYouTuber自身が法律に触れる可能性があるんです。
また、市民逮捕を行った後は、直ちに警察に通報し、犯人の身柄を引き渡す義務があります。
しかし、一部のYouTuberはこの義務を怠り、長時間にわたって犯人を拘束したままにしてしまうことがあるんです。
これは違法な監禁となり、法律に触れる可能性があります。
このように、一部のYouTuberによる市民逮捕は、法律的な問題だけでなく、個人の人権を侵害する可能性もはらんでいます。
3)法律的な視点から見た市民逮捕の問題
市民逮捕が適法となるための要件の復習ですが…
❶犯罪が現行犯であること。
❷そして逮捕者がその犯罪を直接目撃したこと。
❸市民逮捕後は直ちに警察に通報すること。
❹犯人の身柄を警察に引き渡すこと。
でしたよね。
さらに、市民逮捕の現場での捜索・差押・検証は許されていません。
つまり、行方不明になった犯人を探すため、人の身体・物件・住居などを強制的に調べることはできません。(捜索✖︎)
また、証拠物を没収することもできません。(差押✖️)
さらに、現場の状況や人・物を観察して証拠調べをすることも認められません。(検証✖️)
これらの行為は、警察や司法機関などの公的な権限を持つ者が、法律に基づいて行うものです。
私人がこれらの行為を行った場合、それ自体が法律に違反する可能性があります。
したがって、犯罪を目撃した場合は、市民逮捕(捜索・差押・検証含む)は謹むべきです。
犯罪を目撃した場合は、まず警察に通報することが最善の行動と言えるでしょう。
市民逮捕でコンテンツを作り、動画配信するのはもっての外です。
4)弁護士からの警告
例えば、ある晩、あなたが自宅でテレビを観ていると、突然、窓ガラスが割れる音が聞こえ、見ると見知らぬ人が自宅に侵入してきたとします。
その場で犯人を追い詰め、市民逮捕を試みることは可能ですが、その行為が法律的に許されるのは、非常に限られた条件下だけでしたよね。
この場合、自宅に侵入した人が犯罪を犯していることが明らかであり、警察に通報する時間がない場合、市民逮捕を試みることは許されます。
しかし、その際には適切な力を使うことが求められ、過度な力を使った場合、自身が法律を犯す可能性があります。
したがって、市民逮捕は非常にデリケートな行為であるといえます。
また、市民逮捕を行った後は、直ちに警察に通報し、犯人の身柄を引き渡す義務がありこれを怠ると、違法な監禁となる可能性があります。
さらに、市民逮捕の現場での捜索・差押・検証は私人逮捕では許されていませんでしたよね。
これらの行為を行った場合何度も言うように、違法行為となり、あなたが罰せられる可能性があります。
確かに、市民逮捕は表面的には犯罪防止の効果的な手段と見えますが、その背後には数多くの法的な課題が存在します。
それゆえに、私たちは市民逮捕についての適切な知識を持つことは極めて重要です。
それは自己防衛の一環であり、また、他人を無意識に傷つける可能性を減らすためでもあります。
この事実を理解し、適切な行動をとることで、私たちは自分自身と他人を保護することができるのです。
5)市民逮捕系YouTuberへの対策
市民逮捕系YouTuberの行為を止めるための対策、皆さんはどのような方法を思いつきますか?
他人の行為、しかも身も知らずもしない人の行為ですから難しいですよね。
考えられる方法としては、YouTubeのガイドラインの強化や法律の適用、さらには視聴者の意識改革などが、あげられます。
YouTubeは、ユーザーが投稿するコンテンツに対して一定のルールを設けています。
しかし、市民逮捕系の動画が問題となると、そのルールの中に、市民逮捕のような行為を禁止する項目を設けることも一つの対策となるのではないでしょうか?
次に、法律の適用です。
市民逮捕が適法となるための要件が厳格に定められており、それが満たされない場合、市民逮捕を試みた人自身が逮捕されるリスクがあります。
これを明確に伝え、法律を遵守することの重要性を訴えることも必要です。
最後に、視聴者の意識改革ではないでしょうか?
市民逮捕系YouTuberの動画が多くの視聴者を持つ一方で、その行為の危険性を理解していない人も多いかもしれません。
視聴者自身が市民逮捕の問題を理解し、そのような動画を見ない、または見ても賛同しないという意識を持つことが求められます。
このように、市民逮捕系YouTuberの行為を止めるためには、様々な対策が必要といえます。
それは、私たち一人一人の意識改革から始まるのではないでしょうか?
まとめ
この記事を通じて、市民逮捕の問題点とその背後にある法律的な課題について理解していただけたでしょうか。
市民逮捕は一見、犯罪を防ぐための有効な手段のように思えますが、その裏には多くの法律的な問題が潜んでいます。
それゆえに、私たちは市民逮捕についての適切な知識を持つことが重要です。
それは自己防衛の一環であり、また、他人を無意識に傷つける可能性を減らすためでもあります。
この事実を理解し、適切な行動をとることで、私たちは自分自身と他人を保護することができるのです。
市民逮捕系YouTuberの行為を止めるためには、様々な対策が必要といえますよね。
それは、私たち一人一人の意識改革から始まると思われます!