あなたは、無在庫転売という言葉を聞いたことがありますか?
インターネットで商品を売る人が、自分で商品を持っていないのに、注文を受けてから他のサイトで買って送ることです。
これは必ずしも違法ではないのですが、法律に触れる可能性がある行為を避ける必要があります。
また、販売サイトの規約によっては無在庫転売が禁止されている場合もあります。
この記事では、無在庫転売の定義と、法的な問題や注意点について、わかりやすく説明します。
【もくじ】
1)無在庫転売とは何か
2)無在庫転売は違法なのか
3)無在庫転売が違法になる特定のケース
4)無在庫転売にはどんなリスクがあるか
5)無在庫転売をするときに注意すべきこと
1)無在庫転売とは何か
無在庫転売とは、インターネットで商品を売る人が、自分で商品を持っていないのに、注文を受けてから他のサイトで買って送ることです。
例えば、ある人がAというサイトで1000円で売っている商品を、自分のサイトで2000円で売っています。
誰かがその商品を買うと、その人はAのサイトで1000円で商品を買って、直接その人の住所に送ってもらいます。
その人は、商品を見ることも触ることもなく、1000円の利益を得ることができます。
これが無在庫転売の仕組みです。
ネットがなかった時代にはとても考えられない方法ですね。
2)無在庫転売は違法なのか
無在庫転売は、一概に違法とは言えません。
しかし、無在庫転売をするときには、以下のような法的な問題に注意しなければなりません。
①消費者契約法
消費者契約法では、消費者に不利な契約は無効とされています。
無在庫転売では、商品の品質や納期について、自分で保証できないのに、消費者に対して責任を負うことになります。
これは、消費者に不利な契約とみなされる可能性があります。
また、消費者に商品の出所や価格差を明らかにしない場合、消費者に重要な事実を隠していると言えます。
これは、消費者契約法に違反する行為です。(消費者契約法第4条、第10条)
消費者契約法 第4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
1.重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認
2.物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
消費者契約法 第10条第3項 消費者契約の条項が民法第1条第2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
②不正競争防止法
不正競争防止法では、他人の商品やサービスを自分のものと偽って販売することは禁止されています。
無在庫転売では、他のサイトで販売されている商品を、自分のサイトで販売しています。
これは、他人の商品を自分のものと偽っていると言えます。
しかし、これが必ずしも不正競争防止法に違反するわけではありません。
無在庫転売が違法となるかどうかは、具体的な行為や状況によります。
例えば、他人の商品を自分のものと偽装し、消費者を誤解に導くような行為は問題となる可能性があります。
したがって、無在庫転売を行う際には、法律を遵守し、消費者を誤解に導くような行為を避けることが重要です。(不正競争防止法第2条、第2条の2)
ただし、具体的な事例や状況により、法的な評価は変わる可能性があります。
法的な疑問がある場合は専門家に相談することをおすすめします。
また、無在庫転売を行う際には、法律や規約を遵守し、消費者を誤解に導くような行為を避けることが重要です。
③著作権法・刑法等
無在庫転売では、他のサイトで販売されている商品を、自分のサイトで高く売っています。
これは、消費者から不当に金銭を得ることになります。
しかし、無在庫転売において、他のサイトで販売されている商品を自分のサイトで高く売る行為自体は、法律上違法ではありません。
なぜならば、商品を安く仕入れて高く販売することは、一般的なビジネスの原則であり、利益を得るための基本的な手法といえるからです。
ただし、消費者を誤解に導くような行為や、他人の著作権を侵害する行為などは法律に違反する可能性があります。
また、他のサイトの商品を注文した後に、自分のサイトの注文をキャンセルする場合、他のサイトの商品を無駄にさせることになります。
具体例を出して説明しましょう。
❶商品Aを販売しているサイトXから、あなたのオンラインストアで商品Aを販売します。
❷顧客があなたのオンラインストアで商品Aを購入します。
❸あなたはサイトXから商品Aを購入し、直接顧客に送ります。
❹しかし、顧客が何らかの理由で注文をキャンセルします。
この場合、商品AはすでにサイトXから発送されているため、無駄になってしまうということです。
余談ですが、注文をキャンセルした場合の代金の負担については、具体的な契約内容やサイトの規約によります。
一般的には、キャンセルした人(購入者)がキャンセル料を負担することが多いです。
しかし、これは各サイトの規約や、購入者と販売者間の契約によりますので、具体的な状況により異なる可能性があるので注意が必要です。
その他、他のサイトの商品画像や説明文をそのままコピーして使う場合、著作権や商標権の侵害になる可能性があります。
さらに、商品を発送する意図がないのに代金を受け取る行為は詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があります。
刑法 第246条(詐欺)
1. 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2. 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
無在庫転売を行う際は、これらの法律を遵守し、適切な対策を講じることが重要といえます。
3)無在庫転売が違法になる特定のケース
無在庫転売が違法になる特定のケースは以下のようなケースです。
□ 代金を受け取ったのに商品を発送しない場合
□ 中古品を転売する場合に古物商の許可を得ない場合
□ 医薬品や酒類などの許可が必要な商品を無許可で転売する場合
□ 公式サイトや他の販売者の画像を無断で転載する場合
□ 転売が禁止されている商品を転売する場合(チケット、偽ブランド、電子クーポン等)
□ 所持や販売が禁止されている商品を転売する場合(薬物、武器、わいせつ物等)
□ 無在庫転売が禁止されている販売サイトを利用する場合(Amazon、メルカリ、ヤフオク、ラクマでは無在庫転売禁止)
これらのケースでは、民事上の損害賠償や刑事上の罰金や懲役などの責任を問われる可能性があります。
無在庫転売をする際には、法律や規約に違反しないように注意しましょう。
4)無在庫転売にはどんなリスクがあるか
無在庫転売には、法的な問題だけでなく、以下のようなリスクもあります。
商品の品質や納期の不安定さ
無在庫転売では、商品の品質や納期は、自分ではコントロールできません。
他のサイトで商品が売り切れたり、値段が変わったり、発送が遅れたり、破損したりする可能性があります。
これらのことが起こると、消費者からクレームや返品の要求が来るかもしれません。
また、消費者が他のサイトで同じ商品を安く見つけた場合、詐欺だと思われるかもしれません。
信用や評判の低下
無在庫転売では、消費者に対して正直に商品の出所や価格差を伝えないことが多いです。
これは、消費者に対して不誠実な態度です。
消費者が無在庫転売に気づいた場合、信用や評判を失うかもしれません。
また、インターネット上で悪い口コミや評価をされるかもしれません。
税務上の問題
無在庫転売では、商品の売上や利益を確定申告する必要があります。
しかし、無在庫転売をする人の中には、税務上の申告や記録を怠る人もいます。
これは、税務署から調査や追徴課税を受ける可能性があります。
また、無在庫転売をする人の中には、消費税を請求しない人もいます。
5)無在庫転売をするときに注意すべきこと
無在庫転売をするときには、法的な問題やリスクを避けるために、以下のようなことに注意すべきです。
消費者に対して正直に情報を提供する
無在庫転売をするときには、消費者に対して商品の出所や価格差を明らかにすることが大切です。
消費者に重要な事実を隠すことは、消費者契約法に違反するだけでなく、信用や評判を失うことにもなります。
消費者に対して正直に情報を提供することは、無在庫転売をするときには必要なことです。
消費者が商品の出所や価格差を知っても、あなたのサイトで商品を買う理由があるかもしれません。
例えば、あなたのサイトが他のサイトよりも使いやすかったり、サポートが充実していたり、ポイントやクーポンがあったりする場合です。
消費者に対して正直に情報を提供することで、信頼関係を築くことができます。
他のサイトの商品や情報を無断で使わない
無在庫転売をするときには、他のサイトの商品や情報をそのままコピーして使わないことが大切です。
他のサイトの商品や情報には、著作権や商標権(マークと商品・サービスの組合せ)があります。
これらの権利を侵害すると、不正競争防止法に違反するだけでなく、損害賠償や訴訟の対象になる可能性があります。
他のサイトの商品や情報を使う場合は、必ず許可を得るか、自分で加工や改変をしてオリジナルにすることが必要です。
税務上の申告や記録をきちんとする
無在庫転売をするときには、税務上の申告や記録をきちんとすることが大切です。
無在庫転売で得た売上や利益は、確定申告の対象になります。
確定申告をしないと、税務署から調査や追徴課税を受ける可能性があります。
また、無在庫転売で販売した商品には、消費税がかかります。
消費税を請求しないと、消費税法に違反することになります。
税務上の申告や記録をきちんとすることで、税務署とのトラブルを避けることができます。
まとめ
無在庫転売とは、インターネットで商品を売る人が、自分で商品を持っていないのに、注文を受けてから他のサイトで買って送ることです。
無在庫転売は、一概に違法とは言えませんが、消費者契約法や不正競争防止法や著作権法などの法律に注意しなければなりません。
また、無在庫転売には、商品の品質や納期の不安定さや信用や評判の低下や税務上の問題などのリスクもあります。
無在庫転売をするときには、消費者に対して正直に情報を提供したり、他のサイトの商品や情報を無断で使わなかったり、税務上の申告や記録をきちんとしたりすることが必要です。
無在庫転売は、簡単に利益を得ることができるように見えますが、実際には様々な問題やリスクがあります。
無在庫転売をする前には、よく考えてみることが大切です。