あなたは飲食店を探したり、ネットで商品を購入するときは口コミサイトの記載内容やレビューの星の数など気にする方ですか?
私は飲食店については直感派です。
が、ネットショッピングについては星の数が多ければ迷わず買うし、星の数が少ない場合は改めて商品やその口コミを吟味するようにしています。
また口コミサイトの威力が低下してきていると言われていますが、まだまだ参考にしている人は少なくないはず。
そして主に飲食店では「料理が美味しくない」「接客態度が悪い」「異物が入っていた」などの口コミも少なくないと思います。
人間のやることだからミスもあり、人間それぞれ受け取り方が違うから、良きも悪しきも、様々な口コミレビューが出来上がるものだと思っています。
ということで今回はイマサラながらですが、「口コミサイトはどこまで悪く書いていいのか」をまとめてみました。
【もくじ】
1)適法な口コミとは
2)違法な口コミとは
3)違法なものは御成敗
1)適法な口コとは
お店に対して批判的な内容の口コミを投稿したとしても、すべてが違法になるわけではありません。
これは一般的な常識として理解されています。
お店に対する否定的な意見がどこまで許されるのか、口コミの線引きは難しい問題ですよね。
それでは、許されない、または非常にふさわしくない口コミの基準を考えてみましょう。
「料理が不味い」「店員の態度が悪い」などの批判的な口コミであっても、それが一般の人々にとって有益な情報であれば、その口コミは許されます。
言い換えると、公益性がある口コミは認められます。
仮に、形式的に名誉棄損に当たるような内容でも、その口コミが公益性を持つと判断されれば、名誉毀損罪は成立しません。
ビミョーなところですが、口コミの適法・違法の判断は、その口コミが他の利用者の参考になるかどうか、という観点から行われます。
この観点は、口コミが公正で公平な情報を提供し、消費者の意思決定を助けるという、口コミサイトの本質的な役割を反映していますね。
2) 違法な口コミとは
批判的な口コミの投稿をしたとしても、すべてが当然に違法になるわけではありません。
否定的な口コミであっても、憲法が保障する表現の自由があるため、すべてが違法性を持つわけではないのです。
また、「料理がまずかった」「品揃えが悪かった」などの個人的な感想は、適度であれば問題ありません。
しかし、単に店の評価を下げるための嘘や悪口は、当然ながら違法(犯罪)となります。
①そのため、公益性から全くかけ離れた、事実無根の口コミ投稿は、名誉毀損罪に問われる可能性があります。
刑法第230条(名誉毀損)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
例えば、「味が悪い」のではなく「食べられないほど不味い」や「髪の毛が入っていた」などの事実無根の口コミは許されるべきではありません。
②また、誹謗中傷と捉えられるものも許されません。
例えば、「詐欺だ」「不衛生だ」「味の割に値段が高い」「潰れてしまえばよい」など、批判の範囲を超えた口コミは許されません。
また、個人に対する悪口や私生活に触れるようなことも同様です。
③そして最後に、同じ店に対して、何度も低評価の口コミを投稿したり、仲間内で複数人から低評価の口コミを投稿するなど、嫌がらせを目的とした行為は非常に悪質と言えます。
これらの行為は業務妨害罪にあたる可能性があります。
刑法第233条(偽計業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
このような行為は、口コミサイトの公正な運営を阻害し、他の利用者に対しても不利益をもたらします。
それゆえ、これらの行為は厳しく制限されています。
3)違法なものは御成敗
口コミが罰せられる場合には主に4つのケースが挙げられます。
それぞれ複雑でややこしいのですが、1つずつ見ていきましょう。
①公然と(みんなが見ている状態で)ウソかホントかわからないことを書いて、名誉を傷つけた場合には名誉毀損罪に問われる可能性があります。
そして、記載された内容が本当か嘘かは関係ないことがポイントです。
記載内容が本当であっても処罰されることがあるので注意しましょう。
また、「料理がまずい」「店員の接客態度が悪い」「料理が出るまで時間がかかる」などの具体的な内容を述べ、その内容が店の評価を下げることとなれば、名誉毀損罪が成立します。
評価を下げるという点がポイントになります。
②事実を述べなくても、公に他人を侮辱した場合は侮辱罪が成立する可能性があります。
例えば、「バカ」「アホ」「つぶれろ!」などと投稿をした場合です。
侮辱罪は公然と行われなければ成立しませんが「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状況を指します。
つまり、他人がその侮辱行為を認識できる状況下で行われた侮辱行為が侮辱罪となります。
刑法第231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
③嘘の噂を広めたり、だますことによってお店の信用を傷つけた場合には信用毀損罪が成立する可能性があります。
この場合は、嘘やだますことを故意に行い、事実に反して「料理の中に虫が入っていた」などと投稿し、お店の信用を傷つけた場合に犯罪となります。
あくまで嘘の内容を投稿したときに成立します。
刑法233条(信用毀損及び偽計業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
④偽計業務妨害罪とは、同じく嘘の噂を広めたり、だますことにより、お店の信用を落とし、営業妨害につながる恐れがある場合に成立する可能性があります。
例えば、まだそのお店に行ったことのない人がその悪質な書き込みを目にして予約をキャンセルするような場合は、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
以上をまとめると、以下のようなケースで口コミが罰せられる可能性があります。
①名誉毀損罪:具体的な内容を述べ、その内容が嘘でも本当でも店の評価を落とした場合。
②侮辱罪:公に具体的な事実を告げなくても(ネットの場合公然でなくても)例えば「バカ」「アホ」などの単なる悪口に過ぎないような口コミを書き込む場合。
③信用毀損罪:嘘の情報によって店の信用を傷つけた場合。
④威力業務妨害罪:嘘の情報によって店の信用を傷つけ、それが営業の妨害につながる恐れのある場合。
これらはややこしいですが、どれかに当たる可能性があるので、気になったものがある場合はチェックしてみてください。
また、これらとは別に、口コミがプライバシー権の侵害に当たる可能性もあります。
その場合、刑法ではなく、民法第709条で損害賠償の請求をすることになります。
民法第709条は以下のように規定されています。
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
この条文によれば、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、その侵害によって生じた損害を賠償する責任を負います。
この規定は、プライバシー権が侵害された場合に適用されます。
まとめ
口コミサイトでは、お店に対する「良くなかった」という意見を投稿することがあります。
しかし、批判的な意見を書いたからといって、それがすぐに法律に反するわけではありません。
どのような批判が許され、どのような批判が許されないのかは、難しい問題です。
例えば、「この店の料理は美味しくなかった」「店員さんの態度が良くなかった」といった批判的な口コミでも、それが他の人にとって有益な情報であれば、その口コミは許されます。
つまり、社会全体にとって有益な(公益性のある)口コミは認められます。
また、その口コミが人の名誉を傷つける可能性がある内容でも、その口コミが社会全体にとって有益な情報を提供している(公益性がある)と判断されれば、名誉毀損罪(人の名誉を傷つける行為)にはなりません。
口コミが法律に適している(適法)か、法律に反している(違法)かの判断は、その口コミが他の人の参考になるかどうか、という観点から行われます。
これは、口コミが公正で公平な情報を提供し、消費者の意思決定を助けるという、口コミサイトの本質的な役割を反映しています。
このことを念頭に置いて、口コミを投稿する際には注意が必要です。
適切な情報を提供し、他人の名誉やプライバシーを尊重することが大切です。