飲み会の席でお酒を飲ませすぎて急性アルコール中毒にさせた人は、どのような法的責任を負わなくてはいけないのでしょうか?
飲み会は楽しいものですが、お酒の飲みすぎは命に関わることもあります。
もし、あなたがお酒を飲ませすぎて相手が急性アルコール中毒になってしまったら、どんな罪に問われるのでしょうか。
また、そうならないためにはどうすればいいのでしょうか。
この記事では、以下の内容について説明します。
【もくじ】
1)急性アルコール中毒とは何か
2)飲ませすぎた人の法的責任はどうなるか
3)飲ませすぎないための対策は何か
1)急性アルコール中毒とは何か
急性アルコール中毒とは、「一気飲み」などでアルコールを短時間に大量に摂取したことでなります。
これは、血中のアルコール濃度が高くなり、脳や呼吸などに影響を与えるためです。
急性アルコール中毒になると、以下のような症状が現れます。
□ 意識がなくなる
□ 呼吸が浅くなる
□ 体温が下がる
□ 吐いてしまう
□ 血圧が低下する
急性アルコール中毒は、放っておくと命に関わることもあります。
呼吸が止まってしまったり、吐いたものが気道に詰まって窒息したり、頭をぶつけて出血したりすることがあります。
急性アルコール中毒になった人を見つけたら、すぐに救急車を呼んでください!
繰り返しになりますか、急性アルコール中毒は危険な状態です。
早急な対応が不可欠といえます。
発見時には速やかに救急車を呼ぶことが重要です。
2)飲ませすぎた人の法的責任はどうなるか
飲み会の席でお酒を飲ませすぎて相手が急性アルコール中毒になってしまった場合、飲ませた人はどんな罪に問われるでしょうか。
これは、飲ませた人の意図や相手の状況によって異なりますが、以下のような場合が考えられます。
□ 脅して飲ませた場合
→ 強要罪(刑法223条)が成立する可能性があります。
強要罪とは、暴行や脅迫などで相手に不利益な行為を強いることを禁じた罪です。
強要罪の刑罰は、3年以下の懲役です。
刑法第223条 (強要)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
□ 酔いつぶす目的で飲ませた場合
→ 傷害罪(刑法204条)が成立する可能性があります。
傷害罪とは、相手の身体を傷つけることを禁じた罪です。
傷害罪の刑罰は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
※ 拘禁刑は、2025年6月1日から導入されます。これは、刑罰の懲役と禁錮を一本化したもので高齢受刑者のリハビリや、若年受刑者の更生指導を手厚く行うことができるようになります。
刑法第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
□ 相手が死亡してしまった場合
→ 傷害致死罪(刑法205条)が成立する可能性があります。
傷害致死罪とは、傷害の結果として相手の死を招くことを禁じた罪です。
傷害致死罪の刑罰は、3年以上の有期懲役です。
刑法第205条(傷害致死)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期拘禁刑に処する。
□ 飲ませる勢いや雰囲気を助けた場合
→ 傷害現場助勢罪(刑法61条)が成立する可能性があります。
傷害現場助勢罪とは、傷害を行う人を助けることを禁じた罪です。
傷害現場助勢罪の刑罰は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料です。
刑法第206条 (傷害現場助勢)
前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
飲み会で相手がアルコール中毒になる場合、強要や酔いつぶしの目的があれば法的な問題が発生する可能性があります。
また、金銭面での問題も出てきます。
無理に飲ませた人は、具合が悪くなった人の治療費を払わなければならないかもしれません。
これを「不法行為責任」と言います。
民法第709条(不法行為)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
飲み会は交流を深め、楽しい時間を過ごす絶好の機会です。
しかし、その一方で、参加者の安全と健康を守るために、慎重な行動が求められます。
無理な飲酒は避け、皆が楽しく、安全に過ごせるよう心掛ける必要があるといえますね。
3)飲ませすぎないための対策は何か
飲み会の席で、お酒を飲ませすぎて急性アルコール中毒になることは、相手の命を危険にさらすだけでなく、自分も法的な責任を問われる可能性があります。
そのため、以下のような対策をとることをおすすめします。
1. 自分の適量を知る
お酒の強さは人それぞれですよね。
自分がどれくらい飲めるか、どんなお酒が合うかを知っておくことが大切です。
また、その日の体調や食事の内容によっても変わりますので、無理をしないようにしましょう。
2. 相手のペースに合わせない
飲み会では、周りの人のペースに合わせて飲んでしまうことがあります。
しかし、それは危険です。
相手がどれくらい飲めるか、どんなお酒が合うかは分かりません。
あくまで、自分のペースで飲むようにしましょう。
3. 飲酒を強要しない
飲み会で、お酒を飲まない人や飲めない人に対して、飲酒を強要するような場面を見たことはありますよね。
しかし、お酒の強要は危険です。
すすめる方としては、相手がなぜ飲まないか、相手がどれだけ飲めるのかは分かりません。
飲酒を強要することは、相手の命を危険にさらすだけでなく、自分も法的な責任を負うことになります。
4. 飲酒を強要されないようにする
飲酒を強要することもそうですが、されないようにすることも大切です。
お酒を強要する人に対しては、自分がなぜ飲まないのか、なぜ飲めないのか理由を伝え断ることも大切です。
また、場合によっては、お酒を強要されないよう、周りの人に協力してもらうことも必要かもしれませんね。
まとめ
この記事では、「飲み会の席でお酒を飲ませすぎて急性アルコール中毒にさせた人の法的責任」について説明しました。
急性アルコール中毒は、命に関わることもある危険な状態です。
飲み会の席でお酒を飲ませすぎることは、相手の命を危険にさらすだけでなく、自分も法的な責任を負うことになります。
飲み会では、自分の適量を知り、相手のペースに合わせない、飲酒を強要しない、飲酒を強要されないという対策をとることが大切です。
お酒は楽しく飲むものです。
飲みすぎて急性アルコール中毒になることがないように気をつけましょう。