分かりやすい身近な法律の話

楽しく分かりやすく身近な法律を中心に説明します。

お店が作った独自のルールは法律的にどこまで有効?&食に関して注意すべきこと

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写真はあくまでイメージです。

「ラーメン工藤」は大阪府吹田市にある人気のラーメン店で、特に「1万円ラーメン」で有名です。

この店では、「大ラーメン」を注文する際に、お客さんから1万円を一旦、預かるというルールがあります。(普通盛りは880円)

そしてお客さんが「大ラーメン」を残すと1万円は罰金として没収される。

このことは2022年4月頃SNSで宣言し話題となりました。

し、色々な反響がありました。

また、ラーメン工藤に限らず、飲食店には様々な独自のルールを設けていますよね。

例えば、「食べ残しがあった場合には、一皿ごとに500円の追加料金を頂戴することがあります。」などもそうですよね。

今回は、「お店が独自に設けたルールは、どこまで法的に有効なのか」について、考えたいと思います。

また、お店独自ルールの話の他に、私たちが飲食店、特に食べ放題などでやっているかもしれない注意すべき点についても説明します。

【もくじ】
1)ラーメン工藤と1万円ラーメン
2)食べ放題での注意点
3)大食い大会に参加したら
4)お店のキャンセル

1)ラーメン工藤と1万円ラーメン

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ラーメン工藤の普通盛りは1杯880円。

「大ラーメン」を注文すると一旦お店に1万円を預けるルールでしたね。

そして、この大ラーメンを残すとお店に預けた1万円が罰金として没収されます。

これは法律に触れないのでしょうか?

結論からいうと法律には触れません。

「大ラーメン」を注文するとお客さんとお店の間に契約が結ばれたことになります。

そして、全部残さず食べるという前提で契約が結ばれます。

もし、全部食べれなかった場合は債務不履行、つまり契約違反となりますよね。

そして、先に預かった1万円は法律上(民法上)契約時に債務不履行=契約違反があった場合の損害賠償に充てる「損害賠償額の予定」にすることができるんです。

(お店とお客さんの合意で。)

なので、法律に反するということにはなりません。

民法第415条(債務不履行
1.債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2.前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
1.債務の履行が不能であるとき。
2.債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3.債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

民法第420条(賠償額の予定)
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

そして、損害賠償の予定は、損害の額に関わりなく予定した額が支払われます。

例えば、損害賠償の予定を1万円として、7,000円の実損害がでても1万円の賠償額を請求できます。

しかし、880円のラーメンを、大にして、残したからといって10倍以上の額である1万円を没収するのは法的に問題があると思われます。

ちなみに2024年3月20日段階で一万円を没収された人はいないとのことでした。

また、店主の工藤文明さんは、「食べられる分だけを注文してほしい」「注文した飲食物はできればすべて食べてほしい」と、冷やかし注文を減らしたいという思いから実施を決めたとのことです。

1)のまとめとして・・

契約自由の原則民法では、契約の際に債務不履行(契約違反)があった場合の損害賠償額を、あらかじめ当事者間で「損害賠償額の予定」として決めることができます。

したがって、お店が特定のルールを設け、それを客が理解し合意した上で契約を結んだ場合、そのルールは法的に有効となります。

▼損害賠償額の予定:ただし、「損害賠償額の予定」は絶対のものではありません。

例えば、食べ残しに対する罰金が商品の価格に比べて過大な場合、その全額が認められる可能性は低いです。

2)食べ放題の注意点

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食べ放題はその名のとおり、食べることは権利でありますが、度を越すと問題になります。

例えば、自ら食べきれない量を注文してお店の営業を妨害したり、他のお客さんの食べる権利を妨害するとお店側から次のように言われる可能性があります。

それは…損害を賠償して下さい!と。

つまり、民法709条にもとづき損害賠償を請求される可能性があります。

この場合は、契約上の賠償責任ではないので、民法709条の要件を満たせば損害賠償を請求されるかもしれません。

民法第709条 (不法行為
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2)のまとめとして…

不法行為:食べ放題の性質上、客が食べきれないであろう量を注文することでお店の営業を邪魔したり、他の客が食べる機会を奪ってしまうような行為をした場合には、不法行為に該当するため、損害賠償請求の対象となる可能性があります。

3)大食い大会に参加したら

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あなたは、大食い大会に出たことはありますか?

大食い大会と言ってもいろいろありますからね。

例えば、成功すれば、無料になるが、失敗すれば罰金を支払うという大食い大会があったとします。

このような大会は民法上、社会の秩序に反しない契約を結ぶのは自由であり特に問題がないのでOKとされています。

但し、全部食べれなければ罰金が法外な100万円などというものは認められていません。

大食い大会に出たいと思っている人はこのような条件をしっかり確認したうえで参加するようにして下さいね。

3)のまとめとして…

▼大食い大会の罰金:大食い大会では、負けたり、食べ残しを出したり、時間内に食べきれなかったときの罰金が法外な値段でないことを確認してから参加するようにして下さい。

4)店の予約とキャンセル

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店を利用すると予約をした段階で利用契約は成立します。

一方的なキャンセルにより、店に損害を与え場合、キャンセル料の他、債務不履行による損害賠償を請求される可能性があります。

また、一般的にあり得ない話ですが、店に損害を与えようと、はじめからドタキャンを企み、大量の予約を入れておき、土壇場でキャンセルした場合、民事上の責任の他、悪質なケースでは偽計業務妨害罪という刑事上の責任も問われます。

4)のまとめとして…

▼飲食店等の予約は法律的には、客が予約をした時点で、店との間には契約が成立しています。

そのため、客が店との契約を一方的に破って店に損害を与えた以上、法的には、店は客にキャンセル料と損害賠償を請求することができます。

また、店に損害を与えるために、はじめからドタキャンを企み、大量の予約を入れておき、土壇場でキャンセルした場合、悪質なケースでは、偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。

刑法第233条 (信用毀損及び業務妨害
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。

まとめ

▼ラーメン工藤と1万円ラーメン

「ラーメン工藤」は大阪府吹田市にある人気のラーメン店で、「大ラーメン」を注文する際に、お客さんから一旦1万円を預かるというルールがあります。

そして、この大ラーメンを残すと預けた1万円が罰金として没収されます。

これは法律に触れないとされています。

なぜなら、「大ラーメン」を注文するとお客さんとお店の間に契約が結ばれ、全部残さず食べるという前提で契約が結ばれるからです。

もし、全部食べられなかった場合は債務不履行(契約違反)となり、先に預かった1万円は法律上(民法上)契約時に債務不履行=契約違反があった場合の損害賠償に充てる「損害賠償額の予定」にすることができます。

しかしながら880円と1万円を比し10倍以上の金額を要求するのは厳しいと考えられます。

▼食べ放題での注意点

食べ放題はその名の通り、食べることが権利なのですが、度を越すと問題になります。

例えば、自ら食べきれない量を注文してお店の営業を妨害したり、他のお客さんの食べる権利を妨害するとお店側から民法709条にもとづく損害賠償を請求される可能性があります。

▼大食い大会に参加したら

大食い大会に出たいと思っている人は、大食い大会の条件をしっかり確認した上で参加するようにしてください。

全部食べれなければ罰金が法外な100万円などというものは法的に認められていません。

▼お店のキャンセル

店を利用すると予約をした段階で利用契約は成立します。

一方的なキャンセルにより、店に損害を与え場合、キャンセル料の他、債務不履行による損害賠償を請求される可能性があります。

また、店に損害を与えるために、はじめからドタキャンを企み、大量の予約を入れておき、土壇場でキャンセルした場合、悪質なケースでは、偽計業務妨害罪に問われる可能性があります。

以上の点に注意して、お店との間でトラブルのないよう飲食を楽しみましょう。