分かりやすい身近な法律の話

楽しく分かりやすく身近な法律を中心に説明します。

もしも世界遺産をぶっ壊したら‥

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世界遺産と聞くと、どんなものを思い浮かべますか?

ピラミッドや万里の長城、富士山や京都の寺院など、人類の歴史や文化を象徴する貴重な遺産がたくさんありますよね。

世界遺産は、ユネスコが保護するべき価値の高いものとして登録されています。

しかし、もしも世界遺産を壊してしまったら、どうなるでしょうか?

しかも、わざとです!

法的にはどんな罪になるのでしょうか?

また、国宝や重要文化財との違いは何でしょうか?

この記事では、世界遺産を壊した場合の法的な責任と、それが国宝や重要文化財とどう異なるのかについて、分かりやすく解説します。

【もくじ】
1)「国宝・重要文化財」と「世界遺産の違い」
2)世界遺産を壊した場合の法的な責任とは
3)国宝や重要文化財との違いはあるのか
4)世界遺産を壊した事例とその判決は

1)「国宝・重要文化財」と「世界遺産の違い」

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そもそもの話ですが、「国宝・重要文化財」と「世界遺産」は何がどう違うのでしょうか?

これを知らずして話は進まないので確認しましょう。

「国宝・重要文化財」は日本政府が指定し、主に日本の有形文化財を対象としています。

例えば岩手県中尊寺金色堂、栃木県日光東照宮兵庫県の姫路城などが有名ですよね。

一方、「世界遺産」はユネスコが認定し、世界中の遺跡や自然などを対象としています。

例えば、奈良県にある法隆寺地域の仏教建造物や、京都府等にある古都京都の文化財兵庫県の姫路城(国宝・重要文化財にも指定)も世界遺産にも登録されています。

これらはそれぞれ異なる価値と意義を持つ文化遺産といえます。

2)世界遺産を壊した場合の法的な責任とは

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それでは本題に入りますが世界遺産をわざと壊すとどんな特別な重罪になるのでしょうか?‥

実は、世界遺産を壊した場合、日本の刑法が適用され、「器物損壊罪」か「建造物損壊罪」のいずれかに問われます。

これらの罪は、他人の所有する物や建物を故意に壊した場合に適用される罪です。

刑法第261条(器物損壊)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法第260条(建造物損壊)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。

器物損壊罪の場合、最高で懲役3年以下または罰金30万円以下、建造物損壊罪の場合、最高で懲役5年以下の刑が科せれます。

世界遺産を壊しておきながら、器物損壊か建造物損壊だけ?と意外に思った方もいるかもしれませんよね。

これについて、世界遺産を破壊した場合、その行為はまず日本の刑法により罰せられます。

なぜなら、その行為は日本国内で行われ、日本の法律が適用されるからです。

国際法は主に国家間の関係を規定しており、個々の市民の行為に対して直接適用されることは少ないのです。

したがって、個々の市民が犯した犯罪に対しては、まずはその人が属する国家の法律が適用されます。

3)国宝や重要文化財との違いはあるのか

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世界遺産には、日本の法律で「国宝・重要文化財」にも指定されているものがあります。

京都府東山区にある清水寺もそのひとつです。

対象物が世界遺産の指定のみ
→器物損壊or建造物損壊のみ

対象物が国宝・重要文化財の指定のみ
→(器物損壊or建造物損壊)+文化財保護法違反

対象物が世界遺産かつ重要文化財の指定
→同上

国宝や重要文化財は、日本の文化財保護法で保護されているもので、その価値や歴史性が特に高いと認められたものです。

国宝や重要文化財に指定されている世界遺産を壊した場合、器物損壊罪か建造物損壊罪に加えて、文化財保護法195条の罪罰が適用されます。

文化財保護法195条の罪罰は、最高で10年以下の懲役or禁錮または罰金100万円以下です。

文化財保護法第195条
重要文化財を損壊し、毀棄し、又は隠匿した者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

つまり、国宝や重要文化財に指定されていない世界遺産を壊した場合は、器物損壊罪か建造物損壊罪の責任を負うのみです。

しかし、国宝や重要文化財に指定されている世界遺産を壊した場合は、文化財保護法195条の罪罰も加わることになります。

なので、国宝や重要文化財に指定されている世界遺産を壊した場合は、かなりの重罪となるということです。

4)世界遺産を壊した事例とその判決は

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□ 実際に、世界遺産を壊した事例はあるのでしょうか?

残念ながら、そういう事例は存在します。

例えば、2012年には、奈良県法隆寺にある世界遺産の金堂を放火しようとした男が逮捕されました。

この世界遺産は、国宝・重要文化財としての保護も受けています。

この男は、火を付けたライターを金堂の屋根に投げ込んだのですが、幸いにも火は消えて大きな被害はありませんでした。

この男は、建造物損壊未遂罪と文化財保護法違反の罪で起訴され、懲役4年の判決を受けました。  また…

□  2016年には、京都の清水寺にある世界遺産の三重塔の壁に落書きをした女子高生が書類送検されました。

清水寺も国宝・重要文化財としての保護も受けています。

この女子高生は、友人と一緒に三重塔の内部に侵入し、壁にペンで「○○ちゃん」と書いたのです。

この女子高生は、器物損壊罪と文化財保護法違反の罪で処分されました。

まとめ

対象物が世界遺産の指定のみ
→器物損壊or建造物損壊のみ

対象物が国宝・重要文化財の指定のみ
→(器物損壊or建造物損壊)+文化財保護法違反

対象物が世界遺産かつ重要文化財の指定
→同上

世界遺産を壊した場合の法的な責任について、分かりやすく説明してみました。

世界遺産は、人類の共通の財産として大切に保護されるべきものです。

世界遺産を壊すことは、法的にも道徳的にも許されない行為です。

世界遺産を訪れるときは、敬意と感謝の気持ちを持って、世界遺産の価値を尊重しましょう。