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遺体、遺骨は誰のもの?いったい誰が管理するのか

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人が亡くなると、その人の遺体や遺骨はどうなるのでしょうか?

遺体や遺骨は、その人の身体の一部ですから、その人のものだと思うかもしれません。

しかし、法律的には、遺体や遺骨は、相続とは関係なく、祭祀を主宰すべき者(一族のお墓や仏壇などを引き継いで管理する人)に権利(所有権)が認められています。

お墓や仏壇は祭祀を主宰すべき者が管理しますが、ではいったい、遺体や遺骨は誰が管理するのでしょうか。

この記事では、遺体や遺骨の扱いについて、分かりやすく説明します。

【もくじ】
1)遺体や遺骨は誰のもの?
2)遺体や遺骨の管理者は誰か
3)遺体や遺骨の管理者の権利と義務
4)遺体や遺骨の管理者が変わる場合

1)遺体や遺骨は誰のもの?

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人が亡くなると、その人の遺体や遺骨は、法律上、「物」とされています。

「えっ!?物、物ですよ、物!、遺体や遺骨が物だなんて」ちょっとした衝撃を受けますよね。

ただし、遺体や遺骨は通常の「物」とは異なり、使用収益、処分(譲渡)等の対象にはならない意味で、きわめて特殊な「物」ということになります。

遺体、遺骨が物だからといって使用収益、処分できるほうが不自然で気持ち悪いですよね。

民法第206条(所有権の内容)
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

ではいったい、遺体や遺骨の何が極めて特殊だといえるのでしょうか?

通常、遺体や遺骨に対する所有権は、祭祀承継者(祖先の祭りを主導する人)にあると解されています。

これは❶亡くなった方の指定もなく、特に❷慣習もなく、❸遺族間の協議や調停で決まらなければ最後は❹家事審判で決めることなっています。

裁判所までの大事になるとは知りませんでした。

そして、その根拠は下記の民法の条文です。

民法第897条(祭祀財産の承継者)
1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。 ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

遺体や遺骨は、その人の人格の象徴であり、尊重されるべきです。

しかし、遺体や遺骨が人格権(自己の尊厳を守る権利)の対象となるかどうかは、法律上明確に定められていません。

遺体・遺骨は人格権の対象だ!と法律で明言して欲しいものです。

そして、人格権の対象であれば、遺体や遺骨は、不敬な扱いや侮辱などから守られるべきです。

例えば自分の死後に「あなたが管理したら!」「いや!オレは遠慮しとくよ。」「◯◯ならやってくれるよ。」「いやいや、お寺に相談してみよう。」

なんて、遺体や遺骨である自分が、たらい回しになったなら、悲しみの極みではありませんか?

成仏できるものもできなくなるように思います。

繰り返しになりますが、「遺体・遺骨は人格権の対象である」というのは、法的な規定ではなく、倫理的な観点からの考え方です。

遺骨や遺体に対する尊重は、法律制定のうえ、倫理や道徳によっても求められるべきと私は強く思います。

あなたはどう思いますか?

2)遺体や遺骨の管理者は誰か

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遺体や遺骨は、祭祀承継者が所有すると解されていますが、それでも誰かが管理しなければなりません。

遺体や遺骨の管理者は、法律によって決められているわけではありません。

一般的には、故人の遺族や親族が管理を行いますよね。

その順序は法律ではなく、家族間の合意や習慣によって決まることが多いです。

例えば、Aさんが亡くなったとします。

Aさんには、配偶者のBさんと子のCさんがいます。

この場合、Aさんの遺体や遺骨の管理者は、通常、Bさんになります。

しかし、これは法律によるものではなく、家族間の合意や習慣によるものです。

Bさんが亡くなったり、管理者を辞退したりした場合は、Cさんが管理者になることが考えられます。

(Bさんに辞退されたら泣きですよね。)

BさんとCさんがいない場合は、Aさんの親や兄弟姉妹、祖父母、叔父叔母などが管理者になることも考えられるんです。

しかし、これも法律によるものではなく、家族間の合意や習慣によるものです。

これは、私の考えですが、法定相続分の順位の規定のように、第一順位、第二順位と決めてくれたなら、最期の時間をもっと安心して(遺体や遺骨として)過ごせるのではないかと思います。

主人(あるじ)のいない、遺体や遺骨なんぞ、まっぴらごめんです。

これから火葬であったり葬式といった一大イベントを迎えてるのですから。

余計なことにとらわれず、次のイベントに備え集中したいものです。

3)遺体や遺骨の管理者の権利と義務

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遺体や遺骨の管理者には、その人の人格権を尊重しながら、遺体や遺骨を適切に扱うことが求められます。

つまり、故人の尊厳や名誉を守るために、遺体や遺骨は適切に扱われなければならないということです。

例えば、故人の遺体や遺骨を無断で撮影したり、不適切に扱ったりすることは、故人の人格権を侵害する行為となります。

このような行為は法律によって禁止されており、違反した場合には罰せられることもあります。

よほどの人でない限り遺体や遺骨を撮影したり、不適切な扱いなどしたりはしないと思いますが。

何度も言いますが、人格権とは、自分の大切なもの(生命、身体、名誉など)を守るための権利のことです。

だから、遺体や遺骨を適切に扱うことが大切なのです。

自分が遺体や遺骨だったら、絶対に粗末に扱われたくはありませんからね。

しかし、これについても具体的な権利や義務については、法律で明確に定められているわけではありません。

遺体や遺骨は、大切に扱わなければならないものです。

だから、適当に捨てたり、放置すると法律で罰せられることがあります。

これは、故人を尊重するための、刑法190条で定められています。

刑法第190条(死体損壊) 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の拘禁刑に処する。

この法律は、死体や遺骨などを不適切に扱う行為を禁じ、違反した場合には法的な罰則が科せられることを示しています。

遺体や遺骨の管理者がどのような行動を取るべきかも明確に法律で定めて欲しかったと思います。

ところで、実際のところ、管理者はその人の遺言や家族間の合意、社会的な習慣などによって決まることが多いといえます。

遺体や遺骨になったときのために遺言を書くことを検討してみますね。

まだ、年齢的には早いですけど。

いずれにせよ、大切に扱ってくれる人にわたしの管理者(妻ですかね??)をお願いしたいものです。

4)遺骨や遺体の管理者が変わる場合

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遺体や遺骨の管理者が変わる場合もあります。

その場合の、手続きも法律ではなく、家族間の合意や習慣によって決まることが多いです。

「えっ!管理者が変わる?どういうこと?」って思いましたが、次のような場合に管理者がかわります。

例えば、肝心要(かんじんかなめ)の遺体や遺骨の管理者が亡くなった場合や、中途で管理者を辞退した(放り出した?)場合、通常は故人の遺族や親族が新たな管理者となります。

しかし、これもまた、遺体や遺骨の管理者が変更したい場合も、その手続きは法律ではなく、家族間の合意によって行われます。

新たな管理者が指名された場合にも、わたしが遺体や遺骨であったなら、その人(新たな管理者)が亡きわたくしを適切に管理してくれることを期待するばかりです。

まとめ

遺体や遺骨の管理については以下のとおりです。

・遺体や遺骨は、その人の人格権によって守られます。

・遺体や遺骨は、その人が生きていたときの尊厳や価値を反映しているため、適切に扱うべきです。

・遺体や遺骨を無断で撮影したり、不適切に扱ったりすることは、その人の尊厳を侵害する行為となり、法律によって禁止されています。

・遺体や遺骨の管理者は、法律によって決められているわけではありません。一般的には、故人の遺族や親族が管理を行います。

・管理者の順序は法律ではなく、家族間の合意や習慣によって決まることが多いです。

・遺骨や遺体の管理者には、その人の人格権を尊重しながら、遺骨や遺体を適切に扱うことが求められます。

・しかし、具体的な権利や義務については、法律で明確に定められているわけではありません。

・遺体や遺骨の管理者がどのような行動を取るべきかは、その人の遺言や家族間の合意、社会的な習慣などによって決まることが多いです。

なんだか寂しいまとめになってしまいましたね。

いずれにしても、わたしが遺体や遺骨になったなら、人格権を最大限に尊重し、最期の最期まで大切に扱ってもらいたいものです。