あなたは「死後離婚」という言葉を聞いたことがありますか?
「死後」に「離婚?」なんだか文字だけをみると意味がわかりませんよね?
「死後離婚」とはどういうことかと言うと、配偶者が亡くなった後に、配偶者の親族との関係を終わらせることです。
なぜそんなことをするのか、どうやってするのか、どんなメリットやデメリットがあるのか、気になりませんか?
この記事では、以下のような内容を分かりやすく説明します。
【もくじ】
1)死後離婚とは何か
2)死後離婚をする理由
3)死後離婚の手続き
4)死後離婚のメリットとデメリット
それでは、さっそく見ていきましょう!
1)死後離婚とは何か
結婚すると、夫と妻だけでなく、それぞれの親や兄弟姉妹とも関係ができますよね。
これを「姻族関係」といいます。
例えば、妻から見ると、夫の両親は「義父」と「義母」、夫の兄弟姉妹は「義兄」や「義姉」、「義弟」や「義妹」になります。
離婚すると、夫と妻はもちろん、姻族関係も自動的に終わります。
しかし、夫や妻が亡くなった場合は、姻族関係は自動的には終わりません。
離婚→姻族関係は自動的に終了
死別→姻族関係は自動的に終了せず
そのため、配偶者が亡くなった後に、姻族関係を終わらせたいと思ったら、市役所や町役場に「姻族関係終了届」を出す必要があります。
民法第728条
1 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意志を表示したときも、前項と同様である。
戸籍法第96条
民法第728条第2項の規定によって姻族関係を終了させる意志を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
これが一般に「死後離婚」と呼ばれるものです。
ただし、「死後離婚」という言葉は、離婚と同じように聞こえますが、実際には違います。
離婚は、夫と妻が生きている間にしかできませんよね。
当たり前ですが、配偶者が亡くなった後に、夫と妻を離婚させることはできません。
「死後離婚」は、あくまで配偶者の親族との関係を終わらせることです。
配偶者との関係は変わりません。
配偶者の遺産や遺族年金も受け取ることができます。
ただし、「姻族関係終了届」を提出した後であっても、配偶者との間に子がいる場合、その子どもと配偶者の血族との関係は変わらないことも当然です。
2)死後離婚をする理由
では、なぜ死後離婚をする人がいるのでしょうか?
死後離婚をする理由は人それぞれですが、一般的には以下のようなものが挙げられます。
□ 配偶者の親族と仲が悪い。
□ 配偶者の親族との同居や付き合いが嫌だ。
□ 配偶者の親族の面倒を見たくない。
□ 配偶者の親族との関係を断ち切って新しい人生を始めたい。
これらの理由は、主に心理的なものですよね。
配偶者が亡くなった後も、配偶者の親族との関係が続くことによって、ストレスや不快感を感じる人もいるのです。
死後離婚をすることで、配偶者の親族との関係を断ち切り、自分の気持ちに余裕を持つことができると考える人がいるといえます。
また、死後離婚をすることには、法的なメリットもあります。
それは、配偶者の親族の扶養義務を負わなくて済むということです。
扶養義務とは、親族が困っていたら助けなければならないという義務のことです。
例えば、親と子、兄弟姉妹は互いに扶養する義務があります。
しかし、配偶者の親族には、最初から扶養義務があるわけではありません。
家庭裁判所が「特別な事情」があるときに限って、扶養義務を負わせることができます。
「特別な事情」には、例えば、配偶者の親族からお金や物をもらったことがある場合などがあげられます。
もし、配偶者の親族が扶養義務を求めてきたら、家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。
そのときに、死後離婚をしていれば、扶養義務を負わなくて済むということになります。
3)死後離婚の手続き
死後離婚の手続きは、市役所や町役場に「姻族関係終了届」を出すだけです。
必要なものは、印鑑と本人確認書類(運転免許証など)です。
また、配偶者の死亡の事実と生存配偶者の確認ができる戸籍謄本も必要です。
姻族関係終了届は、配偶者の死亡後いつでも出すことができます。
姻族関係終了届を出すときに、亡くなった配偶者の親族の承諾は必要ありません。
残された配偶者が一方的にできるということになります。
姻族関係終了届は、本籍地または住所地の市役所や町役場に出すことができます。
死後離婚の法的な効果は大きいですけど、その手続きは比較的簡単ですね。
4)死後離婚のメリットとデメリット
死後離婚には、メリットとデメリットがあります。
メリットは、死後離婚をする理由と重なる部分もありますが、次のようなものです。
□ 配偶者の親族との関係にストレスや不快感を感じなくなる。
□ 配偶者の親族との同居や付き合いをやめることができる。
□ 配偶者の親族の扶養義務を負わなくて済む。
□ 配偶者の親族との関係を断ち切って新しい人生をおくることができる。
例えば、再婚したいと思ったときに、死後離婚をしていれば、配偶者の親族との関係に気を遣う必要がありませんよね。
また、配偶者の親族との関係が終わると、戸籍も変わります。
配偶者の戸籍から外れて、自分の戸籍に戻ることができます。
これは、自分の苗字や本籍地を変えたくないという人にとっては、メリットになるかもしれません。
一方、死後離婚には、デメリットもあります。
デメリットは、以下のようなものがあります。
□ 配偶者の親族との関係が良好だった場合、死後離婚をすると関係が悪くなる可能性がある。
□ 配偶者の親族との関係が終わると、配偶者の墓参りや法事に参加できなくなる可能性がある。
□ 配偶者の親族との関係が終わると、配偶者の親族からの相続や贈与が受けられなくなる可能性がある。
□ 配偶者の親族との関係が終わると、配偶者の親族の相続や贈与に関する税金が高くなる可能性がある。
これらのデメリットは、主に経済的、社会的なものですよね。
また、配偶者の親族との関係が終わることによって、お金や人間関係に影響が出ることがあります。
死後離婚をすることで、配偶者の親族との関係に自由が得られると考える人もいますが、その反面、配偶者の親族との関係に孤立や不利益を感じることもあります。
人間関係におけるマイナス面とでも言いましょうか•••
まとめ
この記事では、「死後離婚」について、分かりやすく説明しました。(そのつもりです。)
「死後離婚」とは、配偶者が亡くなった後に、配偶者の親族との関係を終わらせることです。
死後離婚をする理由は人それぞれですが、一般的には心理的なものや法的なメリットがあります。
死後離婚の手続きは、市役所や町役場に「姻族関係終了届」を出すだけでしたね。
そして、死後離婚にも、メリットとデメリットがありました。
メリットは、配偶者の親族との関係にストレスや不快感を感じなくなることや、扶養義務を負わなくて済むことなどです。
デメリットは、配偶者の親族との関係が悪くなることや、相続や贈与に関する税金が高くなることなどです。
死後離婚をするかどうかは、自分の判断になります。
配偶者の親族との関係をどうしたいか、自分の気持ちや状況を考えて、よく検討してください。
この記事が、死後離婚についての理解や参考になれば幸いです。