ある日、あなたが胃腸薬を飲んでいるのを見て、「これが毒薬だったらどうなるんだろう?」とふとあなたの友人が思ったとします。
怖い友人ですねぇ。
もし誰かが胃腸薬を毒薬と誤解し、殺人の意図を持って相手に飲ませた場合、それは法律上どのように扱われるのでしょうか?
今回は、そんな興味深いテーマについて、日本の法律の観点から詳しく解説していきます。
結論
結論から言うと、胃腸薬を毒薬と誤認し、殺人の意図を持って相手に飲ませた場合でも、殺人未遂が成立する可能性があります。
理由
日本の法律では、犯人の行為に「故意」が認められることが重要です。
つまり、犯人が相手を殺そうとする意図(故意)を持ち、その意図に基づいて行動(行為)した場合、結果的に相手が死ななかったとしても「殺人未遂」が成立します。
もっと簡単に言うと、殺すつもりがあって行動に移したけれど、結果的に相手が死ななかった場合でも、法律上は「殺人未遂」として扱われるということです。
具体例
例えば、AさんがBさんを殺そうと考え、毒薬だと思い込んでいた胃腸薬をBさんに飲ませたとします。
結果的にBさんには何の害も及ばなかったとしても、Aさんの行為は殺人未遂として扱われる可能性があります。
解説
❶行為の意図
まず、犯人が胃腸薬を毒薬と誤認し、殺人の意図を持って相手に飲ませたかどうかが重要です。
この場合、犯人が本当に毒薬だと思い込んでいたかどうかがポイントになります。
❷誤認の合理性
次に、犯人が毒薬と誤認することが合理的であったかどうかも考慮されます。
例えば、胃腸薬のパッケージが毒薬に似ていたり、誰かが「これは毒薬だ」と言っていた場合、誤認が合理的と判断されるかもしれません。
❸実際の結果
胃腸薬が実際には無害であり、被害者に害が及ばなかった場合でも、殺人未遂が成立するかどうかについてですが、これは成立する可能性があります。
なぜなら、重要なのは犯人の「意図」と「行為」であり、結果は二次的なものだからです。
❹法律の適用
日本の刑法における殺人未遂の成立要件に該当するかどうかについてですが、殺人未遂は「人を殺そうとする意図を持ち、その行為を実行したが、結果的に殺人が未遂に終わった場合」に成立します。
したがって、犯人が毒薬だと思い込んでいた胃腸薬を飲ませた場合でも、殺人未遂が成立する可能性があります。
❺故意の有無
犯人の行為に故意が認められるかどうかも重要です。
故意とは、犯人が自分の行為が犯罪であることを認識しながら行うことを指します。
この場合、犯人が毒薬だと思い込んでいたことが故意と認められるかどうかがポイントです。
❻判例の参照
過去の類似事例や判例についてですが、実際に毒薬と誤認して無害な物質を飲ませた場合でも、殺人未遂が成立した判例があります。
例えば、明治35年10月30日の大審院判決では、継母(ままはは=義理の母)を殺そうとした人が毒物だと思っていた物を食べさせようとしました。
※ ちなみに 大審院(だいしんいん)は、かつて日本に存在した最高裁判所の前身です。
しかし、その物は実際には無害でした。
それでも、殺人未遂が成立した事案です。
このように、毒薬と誤認して無害な物質を飲ませた場合でも、殺人未遂が成立することがあるのです。
これで分かりやすくなったでしょうか?
このような判例を参考にすると、今回のケースでも殺人未遂が成立する可能性が高いと言えます。
まとめ
胃腸薬を毒薬と誤認し、殺人の意図を持って相手に飲ませた場合でも、殺人未遂が成立する可能性があります。
重要なのは、犯人の「意図」と「行為」であり、結果は二次的なものです。
過去の判例も参考にしながら、法律の適用について理解を深めて下さいね。