分かりやすい身近な法律の話

楽しく分かりやすく身近な法律を中心に説明します。

「訴えてやる!」と脅すのは脅迫罪が成立するのか?分かりやすく説明

f:id:gsweets:20240110150307j:image

「訴えてやる!」と相手を脅すのは脅迫罪が成立するのか?

また、脅迫罪が成立するためにはどんな要件が必要でどのようなものが脅迫罪といえるのか。

これはとても興味深いテーマですね。

「訴えてやる!」と相手を脅すのが脅迫罪になるかどうかは、その状況や具体的な内容によります。

脅迫罪が成立するためには、「実行行為」「結果」「故意」の3つの要件が必要です。

具体的には、「お前を殺すぞ」などの言葉を使って、相手に命の危険を感じさせる行為が脅迫罪に当たる可能性があります。

しかし、「訴えてやる!」という言葉自体は、法的な手段をとるという意味で、それ自体が脅迫罪になるとは限りません。

ただし、その言葉が相手を不利益にすることを示唆(それとなく伝えること)または宣言する形で使われ、相手がそれによって恐怖を感じる場合、脅迫罪に当たる可能性があります。

今回は、このような疑問に答えるために、脅迫罪という犯罪について分かりやすく説明します。

【もくじ】
1)脅迫罪とは何か
2)脅迫罪が成立するための要件
3)脅迫罪の具体例

1)脅迫罪とは何か

f:id:gsweets:20240110154415j:image

脅迫罪とは、刑法第222条に定められた犯罪です。

この法律によると、脅迫罪とは、「暴行又は殺害をすると脅迫し、又は人の「生命」「身体」「自由」「名誉」若しくは「財産」に対する害を加えると脅迫し、人を恐怖させた者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」ということです。

① 暴行・殺害すると→脅迫
      又は
② 生命 身体 自由 名誉 財産→加害すると脅迫
       ↓
    人を恐怖させる
(例外的に恐怖に陥らなくても成立する)

刑法第222条(脅迫)
暴行又は殺害をすると脅迫し、又は人の生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対する害を加えると脅迫し、人を恐怖させた者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

ここで注意したいのは、脅迫すれば足り、相手が実際に恐怖に陥ることは不要なことです。

これは、脅迫罪が、被害者が恐怖を感じることが生じるかどうかに関係なく、一定の行為(この場合、害悪の告知)を行った時点で罪が成立する犯罪だからです。

(このような犯罪を、抽象的危険犯といいますす。)

つまり、相手に暴力や殺害をほのめかしたり、相手の大切なものを奪ったり傷つけたりすると言って、相手を怖がらせたら、脅迫罪になるということになりますね。

脅迫罪は、相手に不利益を与えることを目的としているのではなく、相手の心理に働きかけて、相手の意思や行動を支配しようとする犯罪です。

だから、脅迫罪は、相手に実際に害を与えなくても、相手を恐怖させるだけで成立するのです。

2)脅迫罪が成立するための要件

f:id:gsweets:20240110150447j:image

脅迫罪が成立するためには、以下の3つの要件が必要です。

❶脅迫の内容が、暴行や殺害、または人の生命、身体、自由、名誉、財産に対する害というものであること。

❷脅迫の方法が、言葉や文字、ジェスチャーなどで、相手に伝わるものであること。

❸脅迫の結果が、相手が恐怖に陥ることであること。

これらの要件がすべて満たされたときに、脅迫罪が成立します。

逆に言えば、これらの要件のうち、ひとつでも欠けていたら、脅迫罪にはなりません。

例えば、相手に「訴えてやる!」と言っても、それは相手の生命や身体に対する害ではないので罪にはなりません。

また、相手に「殺してやる!」と思っても、それを口に出さなかったり、文字に書かなかったりしたら、相手に伝わらないので、脅迫罪にはなりません。

また、「金を出せ、出さなきゃ殺すぞ!」という言葉は、一般的には人を恐怖に陥らせると考えられるため、脅迫罪に該当する可能性があります。

脅迫罪の成立には、被害者が実際に恐怖を感じたかどうかは関係ありませんでしたよね。

そのため、脅迫罪は成立しません。

さらに、相手に「金を出せ、出さなきゃ殺すぞ!」という言葉は、一般的には人を恐怖に陥らせると考えられるため、脅迫罪に該当する可能性があります。

しかし、脅迫罪の成立には、被害者が実際に恐怖を感じたかどうかは関係ありません。

何度もいいますが、相手が恐怖に陥る必要はないからです。

3)脅迫罪の具体例

f:id:gsweets:20240110150505j:image

では、実際に脅迫罪になったケースを見てみましょう。

以下は、裁判で脅迫罪が認められた事例です。

□  阿部さんは、井上さんに借金をしていましたが、返済ができませんでした。

そこで、阿部さんは、井上さんに電話をかけて、「お前の家族を殺すぞ」と言いました。

井上さんは、阿部さんの声を聞いて、本気だと思いました。

阿部さんは、井上さんに暴行や殺害をほのめかして、井上さんを恐怖させたので、脅迫罪になりました。

□  宇野さんは、江頭さんと恋人同士でしたが、江頭さんは、宇野さんに別れを告げました。

宇野さんは、江頭さんに復縁を迫りましたが、江頭さんは拒否しました。

そこで、宇野さんは、江頭さんにメールを送って、「お前の顔に酸をかけるぞ」と書きました。

江頭さんは、宇野さんのメールを読んで、本当にやられるかもしれないと思いました。

宇野さんは、江頭さんの顔に酸をかけると脅迫して、江頭さんを恐怖させたので、脅迫罪になりました。

□  小川さんは、加藤さんと同じ会社で働いていましたが、加藤さんに嫌われていました。

ある日、小川さんは、加藤さんの机の上に、ナイフと紙切れを置きました。

紙切れには、「お前を刺すぞ」と書いてありました。

加藤さんは、小川さんの仕業だと分かって、本当に刺されるかもしれないと思いました。

小川さんは、加藤さんを刺すと脅迫して、加藤さんを恐怖させたので、脅迫罪になりました。

以上、いずれの場合も被害者は恐怖に陥っていますが、しつこいようですが、被害者が恐怖に陥ることは必ずしも必要ではありませんので。

(抽象的危険犯)

まとめ

今回は、脅迫罪という犯罪について説明しました。

脅迫罪とは、相手に暴力や殺害、または人の生命、身体、自由、名誉、財産に対する害をほのめかして、相手を恐怖させる犯罪です。

脅迫罪が成立するためには、脅迫の内容、方法、結果の3つの要件が必要です。

脅迫罪は、相手に実際に害を与えなくても、そして、相手が恐怖に陥らなくても成立します。

脅迫罪は、相手の心理に働きかけて、相手の意思や行動を支配しようとする犯罪だからです。

脅迫罪は、とても危険な行為で、相手に大きな精神的な苦痛を与えます。

だから、脅迫罪は、厳しく罰せられるべきです。

あなたはケンカのときに、「訴えてやる!」と言ったことはありませんか?

でも、それは脅迫罪にはなりません。

しかし、それでも、相手に不快な思いをさせることになります。

だから、あなたは、相手に対して、穏やかに、平和的に、話し合うことを心がけるのがベストではないでしょうか。

相手を脅すことは、決して良いことではありません。

相手を尊重することが、良い関係を築くことにつながるといえますよね。