【前編】死刑囚 最期の半日、日本の死刑制度のカンタンな概要や、刑務所や拘置所での死刑囚の生活についてお話しました。
そして、当日の朝、いよいよ死刑囚には執行が告げられます・・。
【後編】はその続きをお伝えします。
ぜひともお読みください。
【もくじ】
1)死刑総論
2)独房での生活
3)死刑の告知後
4)死刑前の1時間
5)刑務官について
4)死刑前の1時間
死刑前の約1時間、死刑囚には猶予時間が与えられます。
場所は教誨室。(きょうかいしつ)
ここでは教誨師と呼ばれる、今まで何度か接したことのある牧師や僧侶が呼ばれることが多いとのことです。
教誨師は、刑務所など受刑者を教え、諭したり改心するよう導く人。
この約1時間の間に教誨師との会話ができます。
これは死刑囚が精神的にリラックスできるための配慮でもあります。
ここではお祈りしたり、タバコを吸ったり、お菓子やお供え物を食べることもOKです。
お供え物?・・疑問に思った人もいるかもしれませんよね。
実はすでに、仏壇が用意されていて、そこにはお供え物がされています。
そしてその仏壇が誰のためのものかというともちろん死刑囚のためのもの。
だからそこにお供えされているものは死刑囚のためのものということになるのです。
仏壇にはお菓子や果物などがお供えされていますが、食べる死刑囚は少ないとのことです。
その気持ちわかるような気がしますよね。
自分だったらやっぱり食べることはできません。
今はもうやめましたが冥土のみやげにタバコは吸うかもしれません。
また暴れる死刑囚については教誨師との話は当然省略となります。
5)前室そして刑場(執行室)へ
教誨室での猶予時間が終わると刑場(いわゆる執行室)とカーテン1枚でしきられた前室という部屋に通されます。
前場ではいよいよ「所長」から正式に死刑の執行を告げられます。
「私の命で償いにはならないけれど遺族の方にせめてもの償いになれば」と自ら罪を深く反省している死刑囚もいるそうです。
刑務官はたとえ仕事であろうが、そして相手がたとえ死刑囚であろうが、こんな時には心が苦しいそうです。
前日での時間は最期の時間。
お経を共称えたり、讃美歌を歌ったりして過ごすとのことです。
そして目隠しをされ手錠をはめられ、いよいよ刑場(執行室)へと向かうことに。
執行室では「最後に何か言い残したことはないか」と尋ねられます。
そしてこの執行室、普通の個室ではなくガラス張りになっているそうです。
これは検察官をはじめ、検察事務官、所長又はその代理人など死刑執行に立ち会う人たちに中の様子が見えるようにと言う配慮です。
刑事訴訟法第477条
死刑は、検察官、検察事務官及び刑事施設の長又はその代理者の立会いの上、これを執行しなければならない。
いよいよ死刑執行、執行室には踏み台があってその上に死刑囚は立たされ脚を縛られ、首にロープがかけられます。
これで執行準備完了です。
刑務官長の合図で別室にある3〜5人(刑務所・拘置所の場所による)の刑務官は同時にボタンを押し、1つのボタンだけが踏み板と連動していて板が外れる仕組みになっています。
そして死刑囚は、下へと落下。
複数人でボタンを押すのは、誰が押したボタンで踏み板が外れ、死刑囚を死に至らしめたか分からないようにするためです。
つまり執行官の心理的負担を軽くするためといえます。
自分が押したボタンで死刑囚が亡くなったなとわかればその心理的なダメージはなおいっそう大きなものになりますからね。
死刑囚は12分〜13分吊されたままの状態で、地下には落下してくる死刑囚を受け止めら(抱きつく)刑務官もいるそうです。
私が思うにボタンを押す刑務官もそうですが、最も精神的にまいるのはこの死刑囚に抱きつく刑務官ではないかと思います。
刑の失効後、医官と呼ばれる医師が死亡を確認し、確認後5分しないとロープを外すことができないとされています。
これは刑の執行が仮死状態で止まることを避けるため5分待つこととされています。
そして死亡診断書の死因には「刑死」と記載されます。
あなたも見たことがあると思いますが、死刑が執行された日の昼頃、テレビでは死刑執行のニュースが流れますよね。
テレビでも死刑が執行されたことを知ることができます。
6)刑務官について
刑務官と言う仕事は皆が思うほど容易な仕事とは思えませんね。
極悪だった死刑囚であっても死刑を執行する直前の頃には深く反省し、驚くほどの真人間となることもあるそうです。
そんなときは刑務官は、もう一度社会に出てやり直すチャンスを与えることができるなら…と思うとのこと。
そういう人間の死刑執行をする刑務官も法律を守らなければならないけれどかなり辛い思いをするそうです。
執行のボタンを押す刑務官は慰労金として2万円程度もらえその日の仕事は免除されてあがることとなります。
そして、この2万円すぐに使い切ってしまう人の方が多いとのことです。
いくら仕事とはいえ人を殺してもらった手当なのでそういう心理が働くのでしょう。
死刑囚の供養に使う人もおり、また午前中に家に帰ると家族に死刑執行をさとられるので、昼からお酒を飲んで鬱憤(うっぷん)ばらしをする人も。
何か気持ちがわかりますよね。
そんな大変な仕事ではある刑務官(必ず死刑執行に関わる人とは限りませんので誤解のないように)ですが刑務官になるには人事院、法務省が行う刑務官採用試験に合格するのが一般的なルートです。
筆記試験(作文含む)のほかに職業柄、体力検査もありますが、魅力的なのは受験資格。
学歴不問子となっていましたが受験年度の4月1日時点で17歳以上29歳未満の者となっています。
高校中退者や中卒の人、一度社会に出てはみたものの自分にあった仕事が見つからなかったり自分に適性がありそうであれば受験を考えてみるのもアリかと思います。
犯罪者を相手とする、高い職業倫理も求められられる仕事柄、安易な気持ちで受験するのは、おすすめしません。
職業適正を考え、我こそはと思う人は検討してみるのもよいかもしれません。
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse13.html
まとめ
東京拘置所で死刑囚に対するアンケートが行われました。
その中で裁判員制度が導入されて、死刑判決が乱発されているように感じるとの意見が出されました。
もくじ1)の死刑総論で記したように、国民の8割が死刑もやむなしと考えているため、裁判員制度ではそういった民意が反映されているかもしれないと私は思います。
またある死刑囚は、「自分が日々、執行をおびえながらながらも前向きに生きている。人間は生きているからこそ償えるのだと考える。だから死刑制度には反対だ。」と。
そして死刑の賛否は別として、現行法上、死刑は合法的なものであり、今の法律に従わなければならない以上、法律に則り遅滞なく死刑の執行を進めていくことも大切な課題であるとかんがえます。
この記事を読んで「えぇ!そうだったんだぁ」と少しでも思ってくれれば私にとっては喜ばしいことですし幸いです。