
【事件の背景】
2006年8月、福岡市(海の中道)で、飲酒運転と速度超過の車が他の車に追突し、その車が海に転落するという悲劇が起きました。
この事件で、幼い3人の命が奪われました。
被告人は現場から逃げ去り、飲酒を隠すために大量の水を飲みました。
この事件は大々的に報道され、飲酒運転撲滅の機運が高まりました。
裁判官は通常、自らの良心に基づいて判決を下すものですが、この事件はその原則に疑問を投げかけるものでした。
飲酒運転は、昨今非常にやかましく取り上げられており、厳しく責任を問われる。
時節柄というか、そう簡単には済まされない。業務上過失致死と道路交通法違反(酒気帯び運転の罪に問われた被告人に一審が言い渡した懲役1年の実刑を破棄し、あらためて懲役1年6カ月の実刑判決を言い渡した。
大阪高裁 白井万久裁判長
当時64歳 2006.9.14[理由]
引用:長嶺輝輝、「裁判官の爆笑お言葉集」、幻冬舎新書、2007年、10刷、P54
【私の感想】
❶この発言に対する判断
裁判官の白井万久氏が「時節柄」という言葉を使ったことについて、批判的な意見が予想どおりありました。
裁判官は法律と証拠だけを見て判断を下すべきで、社会の雰囲気や人々の意見に影響されてはいけないからです。
しかし、「時節柄」という言葉は、社会の雰囲気が裁判の結果に影響を与えたものと思われます。
❷発言の意図
白井裁判長は、当時、飲酒運転に対する社会の反感が強まっていることを敏感に認識していたことでしょう。
そして、そのような状況や世論を背景に上記の発言(判決理由)に至ったものと思われます。
つまり、飲酒運転に対して厳しい罰を求める声が多いことを示したもの(発言)だと思われます。
❸裁判官に対する批判や評価
白井裁判長の「時節柄」という言葉は、新聞やテレビ、人々の意見に影響を受けていると思われます。
これでは、裁判官が公平であるべきという原則に反するものになってしまいます。
また、白井裁判長は以前、「法律の安定性を重視するため、特定の犯罪に対し厳罰化することは慎重であるべき」旨の発言をしています。
しかし、過去のその発言と当該理由の発言には一貫性はないようです。
これらのことも裁判官の判断が批判される可能性が考えられます。
以上のことから、裁判官の発言は、法律家や一般の人々から見ても、裁判の公平性や客観性を損なう可能性があると思われます。
裁判官が社会の動きに敏感であることは理解できますが、それが裁判の結果に直接影響を与えるべきではありません。
裁判の結果は、法律と証拠だけを見て公平に決められるべきものではないでしょうか。