※【前編】は痴漢と間違われないため、または間違われた時の対応について記しました。
主な内容は以下の通りです。
1. 痴漢冤罪事件に巻き込まれないための対策
女性の近くに立たない、両手は顔より高い位置に置く、公共交通機関をなるべく利用しない、満員電車を極力避けるなどの方法が挙げられています。
2. 事件に巻き込まれた場合の対応策
犯人でないことをアピールし、冷静に対応する、家族に連絡をする、弁護士を呼ぶ、体調不良を理由に会社に欠勤届を出す、被害者女性と警察の会話を覚えておく、冤罪であることを証言できる目撃者を探す、証拠として繊維鑑定を依頼するなどのアドバイスがあります。
3. 事件に巻き込まれた場合にしてはいけないこと
女性や駅員に責められ、パニックになり駅員室に入ってしまうことなどが挙げられています。
引き続き【後編】もお読み下さい。
【もくじ】
1)痴漢冤罪事件に巻き込まれないようにする4つのこと
2)事件に巻き込まれたらする8つのこと
3)事件に巻き込まれたらしてはいけない4つのこと
4)示談について
3)事件に巻き込まれたらしてはいけない4つのこと
①走って逃げてはいけない。
弁護士によっては走ってにげろ!と言われ定説になりつつあったこともありますが、絶対にしてはいけないことのひとつです。
理由は簡単。
後々、「やったからにげた」ととらえられるからです。
街中には防犯カメラが設置されています。
また、モバイルSuicaやQRコードなどの電子決済サービスを利用している場合、適切な法的手続きを経た警察や法執行機関が、犯罪の捜査や証拠の収集のために、鉄道会社に利用履歴の照会を行うことで身元が割れてしまいます。
また、逃げる時は夢中なので危険が伴います。
ホームや階段で通行人を転ばせたり怪我を させると暴行罪や傷害罪にも問われかねません。
傷害罪にいたっては最高刑は15年で痴漢より重いのです。(痴漢は最長10年)
刑法第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
刑法第176条(不同意わいせつ)
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
さらに線路上を逃げると、鉄道営業法違反。
電車を停めると多額の賠償金。
一旦、逃げて捕まると警察官・検察官による不起訴処分(裁判沙汰にはしないこと)や無罪判決は事実上不可能。
いいことは、ひとつもないので冤罪だからといって逃げてはいけません。
②女性に絶対に謝罪してはいけない。
日本人の特徴で社交辞令的に「すみません」とか言ってしまいそうですが、それもしてはいけません。
女性と話になってもはっきりと「私は痴漢をしていません」と主張すべきで す。
腕を捕まれつかまったあとの男女間のやりとりは、後の刑事手続きに大きな意味をもちます。
③弁護士のいないところで供述調書にサインしてはいけない。
供述調書とは、刑事捜査において、被疑者や参考人の供述を記した書面の証拠のことで す。
供述調書は、おそらくあなたの気持ちが動揺している中で、客観的な事実と矛盾しているかもしれません。
また、警察官が事実どおりに記載しているともかぎりません。
警察官から署名・押印を求 められたら「弁護士に相談してからサインするかどうか決める」と回答し、弁護士に相談するまでは、絶対に署名・押印してはいけません。
なぜなら、署名・押印のない供述証拠は訴訟に提出できないからです。
自己に不利益な事実がねじ曲げられて書かれた供述証拠に署名・押印したなら、その後の刑事訴訟はねじ曲げられた内容に沿って進んでいきます。
ただし、不本意であっても取調べには、素直に応じて、供述調書には弁護士と相談のう え、署名・押印するようにしましょう。
④警察官には個人情報を隠してはいけない。
自分は何もやってないのだから個人情報を尋ねられるとムッとするかもしれません。
でも正直に伝えるのが身のためです。
氏名・住所・電話番号・勤務先を聞かれると思いますが「逃亡の恐れアリ」と判断されないように正直に話して下さい。
特に勤務先は、こちらから言うようにして下さい。
隠していると名刺等を押収され、警察から会社に在籍確認が入る可能性があります。
よって、個人情報は不本位でも素直に伝えるようにしましょう。
⑤駅員室に入ってはいけない。
たまに、「駅員室に入るとベルトコンベアー式に逮捕され警察署につれていかれるので、 中には入らず名刺を渡して立ち去るのがよい」とアドバイスする人がいますがこれもバツ です。
「駅員室に入ってはいけない」という点は正しいのですが、名刺を渡して立ち去ろうとすると、最終的には女性や駅員ともみ合いになる可能性が高いと思われます。
そこで、強引に立ち去れば、「逃亡」とみなされ逮捕のリスクがあがります。
以上、痴漢に間違われない手段や万が一冤罪事件に巻き込まれたときのすべきこと、してはいけないことをお話ししました。
ただ、現実問題として冤罪事件に巻き込まれた場合には、99.9%の確率で有罪となります。
世論もおそらく、その多くが被害女性につくでしょう。
また、裁判で争っている間の自己に対するイメージや感情は決して良い方向に働きませ ん。
そして、時間と労力、家族への迷惑も多大なものとなるでしょう。
痴漢冤罪事件では、徹底して戦えという熱血な弁護士もいます。
しかし、戦うことによって多くのものを失うことは想像に難くありません。
そこで私は不本位ながら、示談をおすすめします。
示談は「勇気ある戦略的撤退」なのです。
次の項目では、示談についてふれたいと思います。
4)示談について
以下、不本位ながら示談についてお話しします。
被害者の住所や電話番号は、捜査機関が把握し、痴漢冤罪者には絶対に教えてくれません。
しかし、弁護士がいれば冤罪者に教えないことを条件に弁護士限りで教えてもらえる可能性があります。
被害者の連絡先を押さえた弁護士は、速やかに被害者に連絡し、謝罪のうえ、示談交渉を開始。
被害者は痴漢という事件の性質上、強い処罰感情をもっていることが多いので、弁護士はその感情に寄り添いつつ慎重に示談交渉を進めていきます。
示談が成立すれば、弁護士が示談書を作成し、被害者の署名・押印をもらい捜査機関に提出します。
示談の相場は200,000円~400,000円程度となります。
これを高いと見るか、安いと見るかは人それぞれだと思います...
まとめ
痴漢冤罪事件は「悪魔の証明」とも言われ「してない」ことの証明で非常に困難なものと言われています。
また、痴漢撲滅に呼応し冤罪事件も増えています。
もし、起訴されたとしたらその有罪率も99.9%と逆転するには困難な数字です。
何かよい解決法はないものでしょうか?
私の思う限り、一番の悪漢は真犯人です。
彼の痴漢行為は彼が思う以上に被害女性に大きなダメージを与える重大な犯罪行為であるということを彼の良心に訴えかける方法があれば何かが変わるのでしょうが。
今後も悲惨な痴漢事件とそれに伴う冤罪事件が続かないように、また、無実の人が冤罪で苦しむことがないよう、社会全体で痴漢冤罪問題について理解を深め、適切な対策を講じることが重要だと思われます。