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退職金は夫だけのものか?夫婦の財産分与に関する法律と実際の事例

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退職金は退職時に支払われる一時金。

内助の功で築き上げた大金は、夫婦で共有するのでしょうか?

それとも、夫が稼いだものだから全額、夫のものとなるのでしょうか?

いざ、離婚するときになったらこれらの問題は表面化することでしょう。

この記事では、退職金とは何かという基本的なことから、離婚に至ったときの財産分与にも言及します。

また、具体的な事例を通して、離婚時の際に退職金がどのように分配されるかを見ていきましょう。

【もくじ】
1)退職金とは何か?
2)退職金の分与に関する法律はどうなっているか?
3)退職金の分与に関する実際の事例はどうなっているか?

1)退職金とは何か?

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退職金は、会社を退職するときに受け取る一時金のことです。

退職金は、会社が退職者に対して支払う義務があるものと、会社の就業規則や契約によって支払われるものとがあります。

退職金は、退職者の勤続年数や役職、給与などによって決まります。

退職金は、退職者の生活の安定や再就職の支援などの目的で支払われるものです。

ただし、退職金は法定された制度ではありませんのでご注意を!

そのため、退職金制度を設けなくても違法ではありません。

しかし、就業規則に退職金の規定を設けた場合は賃金の一部とみなされ、請求があった場合は支給しなければならなりません。

また、退職金の額は企業それぞれで自由に設定することができます。

2)退職金の分与に関する法律はどうなっているか?

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退職金は、夫婦の財産分与に関係する財産の一つです。

財産分与とは、夫婦が離婚するときに、夫婦の財産を分け合うことです。

財産分与は、夫婦が合意すれば自由に決めることができます。

しかし、夫婦が合意できない場合は、裁判所が決めることになります。

裁判所が財産分与を決めるときには、民法の規定に従います。

民法では、財産分与の対象となる財産は、夫婦の財産のうち、結婚生活によって得られた財産とされています。

民法第768条 (財産分与)
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

このような財産を「夫婦の財産共有」という考え方に基づいて、夫婦のそれぞれの貢献度や経済状況などを考慮して、公平に分けることとされています。

では、退職金は、結婚生活によって得られた財産とみなされるのでしょうか?

この点については、判例によって次のように判断されています。

判例では、「退職金のうち、結婚中に積み立てられた部分は、結婚生活によって得られた財産とみなされる」とされています。

つまり、退職金は、結婚中に勤めた期間に応じて、財産分与の対象になるということです。

しかし、退職金の全額が財産分与の対象となるわけではありません。

退職金のうち、結婚前に積み立てられた部分や、退職後に支払われる部分は、財産分与の対象とはならないとされています。

また、退職金の分与の方法も、一定ではありません。

退職金の分与は、夫婦の財産の総額や、夫婦のそれぞれの収入や年齢などを考慮して、個別に決められることになっています。

3)退職金の分与に関する実際の事例はどうなっているか?

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退職金の分与に関する法律は、一般的な原則を示しているだけです。

具体的な分与の方法や割合は、判例によって決まっています。

以下に、退職金の分与に関する実際の事例をいくつか紹介しますね。

事例1: 夫が退職金を受け取った後に離婚を申し出た場合

夫は、結婚後に勤めた会社を退職し、約1億円の退職金を受け取りました。

その後、夫は妻に離婚を申し出ました。

妻は、夫の退職金の半分を要求しました。

裁判所は、夫の退職金のうち、結婚中に積み立てられた部分は、夫婦の財産共有に基づいて分与することとしました。

しかし、夫の退職金の全額が財産分与の対象となるわけではないとしました。

夫の退職金のうち、結婚前に積み立てられた部分や、退職後に支払われる部分は、財産分与の対象とならないとしたのです。

また、夫婦の財産の総額や、夫婦のそれぞれの収入や年齢などを考慮して、夫の退職金の約3分の1を妻に分与することとしました。

事例2: 夫が退職金を受け取る前に離婚を申し出た場合

夫は、結婚後に勤めた会社を、退職する予定でしたが、退職金を受け取る前に、妻に離婚を申し出ました。

妻は、夫の退職金の半分を要求しました。

裁判所は、夫の退職金は、夫婦の財産共有に基づいて分与することとしました。

しかし、夫の退職金の全額が財産分与の対象となるわけではなく、夫の退職金のうち、結婚前に積み立てられた部分や、退職後に支払われる部分は、財産分与の対象とならないとしました。

また、夫婦の財産の総額や、夫婦のそれぞれの収入や年齢などを考慮して、夫の退職金の約4分の1を妻に分与することとしました。

ただし、夫の退職金は、夫が実際に受け取ったときに、妻に支払われることとしました。

まとめ

退職金の分与に関する法律は、一般的な原則を示していますが、具体的な分与の方法や割合は、判例によって決まります。

退職金の分与は、夫婦の財産共有に基づいて行われます。

しかし、退職金の全額が財産分与の対象となるわけではありません。

退職金のうち、結婚中に積み立てられた部分だけが財産分与の対象となります。

また、退職金の分与の方法や割合は、夫婦の財産の総額や、夫婦のそれぞれの収入や年齢などを考慮して、個別に決められます。

退職金の分与については、夫婦が合意すれば自由に決めることができます。

ただし、合意できない場合は、裁判所に判断を委ねることになります。

退職金の分与は、離婚における重要な問題の一つです。

そのため、退職金の分与については、仲のいいうちに、事前に夫婦で話し合っておくことが望ましいと思います。