
刑法第38条は犯罪が成立するためには故意、つまり罪を犯す意思を必要としています。
刑法第38条(故意)
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
過失犯の場合は刑法第38条但し書きに該当し、刑法典に処罰すべき旨の規定があるときに限り罰せられます。
そこで実際、殺人罪を例にとって問題を出しますので考えてみてください。
(なお問題文に出てくるガチャピンとムックは人間であるものとします。)
【もくじ】
1)問題文
2)解答と説明
3)他の学説
1)問題文

犯人はガチャピンを殺害しようと彼に向けて銃を発砲しました。
しかし、ガチャピンには当たらず隣にいたムックに当たり、ムックは死亡してしまいました。
この場合、過去の裁判例(判例)では何罪が成立することになるのでしょうか?
A)ガチャピンに対する殺人未遂罪
B)ムックに対する殺人罪
C)ムックに対する過失致死罪
2)解答と解説

答え:B) ムックに対する殺人罪
解説:この場合、犯人はガチャピンを狙いましたが実際にはムックに当たってしまいムックが死亡しています。
このケースでは、ガチャピンとムックは(人と物ように異なるものではなく)人というレベルでは一致しています。
そのため、ムックに対しても故意を認めムックに対する殺人罪に該当するとしています。(判例の立場:法定符合説)
3)別の考え方

犯人が考えた事実(ガチャピンの殺害)と実際の事実(ムックの死亡)が一致しない限り殺人の故意は認めないとする考え方があります。
犯人が考えていなかったムックに起きた結果に故意がなければ故意の責任を科すべきではないとし、この場合にはムックに対する過失致死罪が成立することになります。(具体的符合説)
まとめ
このように刑法第38条で定められたように犯罪が成立するためには原則として故意が必要になります。
そしてこの故意が成立するかどうかはその考え方(学説)により異なります。
判例ではガチャピンもムックも同じ人間だから、ガチャピンへの殺人の故意があった以上、ムックへの故意も認めるとし、「ムックに対する殺人罪」が成立することになります。