「遺産相続」それは人生の一大事ですよね。
でも、法定相続、遺言、遺産分割、はたまた遺留分っていったい何よ?
と混乱してしまう方も多いのではないでしょうか?
相続は私たちの生活に密接に関わる重要なテーマです。
だからこそ、誰もが知っておくべき基本的な知識を、わかりやすく解説します。
【もくじ】
1)法定相続とは何か
2)遺言の役割と重要性
3)遺産分割のプロセスと注意点
4)法定相続と遺言の基本
5)遺産分割と遺留分侵害額請求の実際
6)遺言と遺産分割、遺留分侵害請求権の関係
7)遺産相続における法律の役割
1)法定相続とは何か
あなたは「法定相続って何?」と思ったことはありませんか。
法定相続とは、亡くなった人の財産(遺産)が、法律で定められた順序と割合で、その人の親族に分けられることを指します。
民法第882条(相続開始の原因)
相続は、死亡によって開始する。
民法第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
民法第900条(法定相続分)
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
では、実際に民法第900条の法定相続分について計算してみましょう。
※過去記事のこちらの方が図解入りで分かりやすいので参照することをおすすめします。↓
具体例を出すと康夫さん(被相続人)が亡くなったときを例にしましょう。
この場合、相続には順位があって下記のようになります。
つまり康夫さんの配偶者が1/2と子が残りの1/2を子供の人数で均等に分けます。
例えば遺産が6,000万円であった場合
1/2の3,000万円は配偶者が残りの3,000万円は子が3人いれば1,000万円ずつ配分されます。
そしてポイントは配偶者がいれば、原則、配偶者である妻は常に相続人となるということです。
また、子がいない時は、配偶者(法定相続分2/3)第二順位の被相続人の父母(法定相続分1/3)を健在な父母の数でわります。
例えば康夫さんの遺産が6,000万円で配偶者と康夫さんの父母が存在するとします。
この場合、遺産6,000万円の2/3である4,000万円が配偶者の相続分、残り2,000万円を康夫さんの父母が1,000万円ずつを相続します。
最後に第三順位の相続人と法定相続分は被相続人は康夫さんの配偶者(法定相続分3/4)と康夫さんの兄弟姉妹(法定相続分1/4)を兄弟姉妹の数で割ったものが具体的な相続分となります。
例えば康夫さんの遺産が4,000万円の場合配偶者の相続分が3,000万円、弟、妹がいれば残りの1,000万円を500万円ずつ取得します。
このような法定相続分があるからこそ、私たちは公平に遺産を受け継ぐことができるんですよね。
例えば、康夫さんの父親が亡くなったとき、康夫さんは兄弟と一緒に父親の遺産を相続します。(第一順位の相続人)
このとき、法定相続がなければ、遺産をどのように分けるかは、兄弟間の話し合いになり、争いのタネになり兼ねません。
しかし、法定相続があるおかげで、遺産は公平に分けられ、争いを避けることができるのです。
法定相続は、私たちの生活に密接に関わる大切な制度です。
だからこそ、しっかりと理解しておくことが大切ですよね。
2)遺言の役割と重要性
遺言とは、亡くなる前に自分の遺産をどのように分けるかを決める文書のことです。
これがあると、自分の意思を明確に伝えることができ、相続人間のトラブルを防ぐことができます。
民法第902条(遺言による相続分の指定)
被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。
2 被相続人が、共同相続人中の1人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。
例えば、康夫さんは、自分の遺産を特定の人に多く残したいと考えているとします。
しかし、法定相続だけでは、その意思を反映することは難しいですよね。
そこで役立つのが遺言です。
遺言を作成することで、康夫さんは自分の意思を明確に伝え、遺産を希望通りに分けることができるのです。
遺言は、自分の意思を明確に伝えるための大切なツールです。
また、遺産分割には税金の問題も関わってきます。(相続にも相続税がかかりますが割愛させていただきます。)
そこで、遺産分割のプロセスと注意点をしっかりと理解し、必要に応じ専門家のサポートをうけることも大切ですよね。
3)遺産分割のプロセスと注意点
「遺産分割」とは、相続人間で遺産を分ける手続きを指します。
遺産分割には、遺言書に従って行う場合と、相続人間の取り決め(協議、調停、審判)に従って行う場合の2通りがあります。
民法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
これがあると、遺産を公平に分けることができますよね。
康夫さんの父親亡くなり、康夫さんは遺産を母(父の配偶者)と他の兄弟とで分けることになったとします。
このとき、遺産分割のプロセスが重要になります。
遺産の中には不動産や預金など、さまざまな財産が含まれているかもしれません。
これらを法定相続分に従って公平に分けることが求められます。
しかし、遺産分割は簡単なものばかりではありません。
遺産の価値を評価したり、適切な分割方法を決めたりする必要があります。
また、遺産分割には税金の問題も関わってきます。
必要に応じて税務関係のサポートを受けることも大切です。
前編まとめ
今まで見てきたことを箇条書きでまとめますね。
頭の中の整理に一読下さい。
【遺産相続の基本的な知識】
遺産相続は、亡くなった人の財産を親族に分ける重要なプロセスです。
法定相続、遺言、遺産分割、などの基本的な概念を理解することが大切です。
1. 法定相続: 法律で定められた順序と割合で遺産を分けること。
2. 遺言:自分の遺産をどのように分けるかを決める文書。
3. 遺産分割:相続人間で遺産を分ける手続きで、遺言書や協議、家庭裁判所の調停・審判によって行われます。法定相続分はその基準の一つです。
これらの知識を持つことで、遺産相続をスムーズに進め、家族間の争いを避けることができます。
また、相続関係は複雑なので、専門家のサポートを受けることも重要です。
【後編】では【前編】で理解した基本的な概念に基づき、具体的な事例や対策について詳しく見ていきましょう。